アンジェロ州立大学、動物実験の記録公開を拒否し、訴訟に<米国>
アンジェロ州立大学に対しPCRM〈*1〉は、数十匹のマウスに不要な苦痛と死をもたらした「里親」実験に関する記録の開示を求めて訴訟を起こした。
動物の利用と取扱いの実態について知るため、PCRMはテキサス州の情報公開法に基づき、アンジェロ州立大学の動物実験委員会(IACUC)のプロトコル(実験の手順や条件等を記した計画書)、および同プロトコルに関する年次報告を求めて情報開示請求を行った。この中にはマウスを用いた「里親」実験も含まれている。
これは、里親制度において複数の里親を持つ経験が子どもに与える影響を模倣した実験である。マウスの新生児は生後24時間で生物学的母親から引き離されると、生後11日でまた新たな「育ての」母親に移された。実験者は子どものマウスの「不安様」行動を調査するための実験を行った後、マウスを殺し脳の重さを量った。そして、里親が1か所のマウスは2か所のマウスと比べると、より「回復力が強い」と結論づけた。この実験で犠牲になった81匹のマウスのうち、15匹が共食い、7匹が「育児放棄または子殺し」によって死んだ。
PCRMの研究支援コーディネーターFarghali氏は、この実験の愚かしさを指摘し、テキサス工科大学システム〈*2〉の総長にこう苦言を呈している。「この実験が科学的に有効とみなされるならば、里親が何度も変わった子どもたちは、育ての母親に食べられてしまう確率が非常に高くなるという結論が当然導かれることになるだろう」「人間の子どもは里親をころころ変えないほうがよいということを“証明する”ために、81匹のマウスを殺す必要があるのだろうか?動物を殺したからといって、その実験が科学的であるとは言えない。この研究者たちが実験動物の命をどれほど軽視しているか、世間は知る権利があるだろう」
大学側は、IACUCは医療委員会であるため、その記録は情報公開法による開示の対象外であるという理由で、PCRMの記録開示請求を拒否した。テキサス州司法長官はその拒否を支持した。だが、PCRMの法務副顧問Press氏はこのように述べている。「アンジェロ州立大学のIACUCは、医療委員会の法的な定義を満たしていない」「テキサス州の研究者たちは、両立できないことをやっている。公的資金を利用して動物実験を実施し、結果を国の刊行物に発表する。その一方で、自分たちが動物に対して行ったことが書かれた文書を隠しておく。そのようなことはできないのである」
- *1Physicians Committee for Responsible Medicine (責任ある医療のための医師委員会)/米国
- *2アンジェロ州立大学を含むテキサス州の5つの大学で構成される公立大学システム
Angelo State University Sued After Refusing to Release Records on Animal Research Study (PCRM)