「全く容認できない。違法である」: アイルランドで行われている雄の子牛への虐待<アイルランド>
テレビ番組RTÉ〈*1〉 Investigatesによるドキュメンタリー「Milking It; Dairy’s Dirty Secret」で、雄の子牛に対する農場内および欧州への輸出中における動物福祉違反が暴露された。
2015年に欧州連合(EU)の生乳生産割当制度の廃止以来、アイルランドの牛乳生産量は増加しており、その需要に応じるため、毎年約150万頭の乳用子牛が生まれている。雄の子牛は毎年50万頭以上生まれるのだが、乳が出ず十分に肥育されておらず牛肉にもできないため、価値のない副産物とされている。 そのため、生後数日で殺されるか、オランダやスペイン、イタリアの子牛農場、最近ではポーランドやルーマニアの市場に出荷される。
これらの子牛は免疫系が未発達で給餌器具を正しく使用できないため、生後12週齢までは輸送すべきでないとの科学的根拠があるが、生後15日程度で輸出される。 欧州食品安全機関 (EFSA) は、これらの動物が生後初期段階で脆弱であることを強調し、生後5週齢以降に輸送することを推奨している。さらに、EUの規制では、9時間の輸送後、離乳していない子牛には水を与え、必要に応じて給餌し、再度輸送する前に最低1時間の休息を取らせる必要があると明確に規定している。しかし映像では、子牛たちがミルクも休息も与えられないまま30時間輸送されていることが明らかになっている。これはEU法の重大な違反であり、動物福祉の軽視である。また、作業員が子牛を何度も蹴る、棒で叩く、トレーラーから放り投げるなどの様子も見られた。
このドキュメンタリーは政治的な反響を引き起こし、アイルランド農業省は暴露された事実に対する調査をすることを認めた。McConalogue農業大臣は、「全く容認などできず、場合によっては違法である」と述べた。Varadkar首相は、この映像を「不快なもの」と評し、映像内で違反が判明した者たちには「強力かつタイムリーな」措置を講じるとし、この業界の評判は規制の遵守にかかっていると語った。
現行の動物福祉の法律が、飼育、輸送、屠畜時のEUの畜産動物の保護に十分でないことが改めて証明されたのだが、欧州委員会は今年、EU動物福祉法の改正により、輸送規制を改善することができる。また、ドキュメンタリーの中で推奨されているように、「価値がない」とされてしまっている雄の子牛の殺処分や虐待は避けるべきで、現在は性選別精液〈*2〉を使うことでそれが可能となっている。畜産動物の輸送は削減、改善され、他の方法に置き換えられるべきである。
- *1アイルランドの公共メディアサービス
- *2求める性別の子牛を産むことができるよう処理された精液
“Utterly unacceptable and unlawful”: Ireland’s mistreatment of male calves (Eurogroup for Animals)