サルはどこから?どこに供給?情報を隠蔽しつづけるNBRP「ニホンザル」

昨年4月から、文部科学大臣に廃止を求める署名活動を開始した、動物実験用ニホンザルを繁殖・供給するナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」。
このプロジェクトの現状について入手した情報をもとにご報告します。

ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)とは?

2002年に文科省が着手した、動物、植物、微生物といったバイオリソース(生物遺伝資源)、いわゆる研究材料を整備、安定供給させるための一大プロジェクトです(2015年度~2020年度は日本医療研究開発機構(AMED)が事業管理して実施)。
その中の「ニホンザル」プロジェクトは、「母群1,500~2,400頭を集め、毎年300頭を実験用に供給する」という繁殖・供給数が目標として掲げられてスタートし、母群とするために過剰繁殖した動物園や野猿公苑から多くのニホンザルが集められました。そこから産まれた子ザルを実験用に提供しつづけ、サルたちは脳の実験などに使われています。

「ニホンザル」プロジェクトは、毎年のように2億円前後の国からの補助金交付を受けて、代表機関である京都大学ヒト行動進化研究センター(2022年の組織改編前は京都大学霊長類研究所)と分担機関である自然科学研究機構 生理学研究所によって運営されています。

「回答できない」「公表していない」ばかり

この「ニホンザル」プロジェクトを終わらせるために協働して取り組んでいるJAVAとPEACEは、文部科学省、京都大学ヒト行動進化研究センター(以下、京大)、生理学研究所(以下、生理研)に対して、ニホンザルの飼養・供給状況や今後の計画などを確認するために、繰り返し公開質問状の送付や情報開示請求を行ったり、ニホンザルの繁殖・供給の中止やプロジェクトの終了を働きかけてきました。しかし、それに対する回答は「公表していない」ばかりで、情報開示請求をしても肝心な情報が黒塗り(非開示)ばかりなのです。
多額の血税を使って行われている事業であるにもかかわらず、下記のとおり、サルをどこから導入し、どこに提供したのかといった国民に当然知らされるべき情報を隠し続けるとは言語道断です。

JAVAとPEACEからの公開質問状に対する回答より(京大:2021年4月 生理研:2021年7月回答)

Q:プロジェクト始動後、繁殖母群として何年まで何頭導入しましたか?年度ごとの頭数をお答えください。
A:【京大】導入総数は305頭。年度ごとの頭数は公表いたしておりません。最後の導入は2009年度まで。
  【生理研】 導入数に関しては、公表いたしておりません。最後の導入は2004年度まで。

Q:これまでの繁殖母群のサルの導入元をすべてお答えください。 
A:【京大】【生理研】公表いたしておりません。

Q:今後については、新たに繁殖母群の導入はしない方針でしょうか?
A:【京大】【生理研】現在のところ、導入の計画はありません。(JAVA注:2024年6月にも同様の回答)

Q:プロジェクト始動後、何頭繁殖させましたか? 
A:【京大】【生理研】公表いたしておりません。

Q:これまでの供給先と頭数をすべてお答えください。 
A:【京大】【生理研】提供先に関しては、公表いたしておりません。

サルの飼育数・実験への提供数

2021年度まではNBRP「ニホンザル」の公式サイトで飼育頭数を繁殖群(繁殖に用いる母群)と育成群(繁殖した研究用の子ザル))に分けて公表していました。また、2022年度までは研究機関への提供頭数、採択件数、不採択件数の数も公表されていました。ところが、なぜか公表されなくなったのです。そのため、我々の方から確認を行い、それにより明らかになった頭数を加えたサルの頭数の推移は下記の通りです。

2006年度以降の累計提供頭数:1,120頭
2006年度以降の累計提供機関数:40機関

京大に新たに50頭導入されていた

今年2月に発行された京大の2022年度年報で、NBRP「ニホンザル」に50頭が新たに導入されていたことがわかりました。しかし、京大も生理研もこの50頭の導入元について答えません。

京都大学ヒト行動進化研究センターの年報Vol.1(2022年度の活動)より

生理研は奄美大島の民間企業「株式会社奄美野生動物研究所」にサルの飼育を委託しています。この民間企業の施設では、上のグラフのとおり、2022年3月31日時点で163頭(繁殖群155頭 育成群8頭)のサルを飼育していましたが、生理研はすでに繁殖と子ザルの供給は廃止していることから、母群のサルたちをどうするかという課題が生じていました。
この奄美野生動物研究所で飼育されているサルたちは殺処分される恐れがあったため、処遇についても、JAVAたちは繰り返し京大と生理研に確認をしてきましたが、「検討中」との回答を続けています。

そのような中での京大への50頭導入なので、奄美からのサルではないかとの疑いを持たざるを得ません。
繁殖母群のサルたちは導入から20年以上経っている個体もいて、20年程度であるサルの寿命から考えると死亡はあり得ることで、生理研は、2022年度の死亡数は12頭(繁殖群11頭 育成群1頭)と私たちに答えています。ところが1年後(2023年3月31日)には、飼育数が101頭(繁殖群97頭 育成群4頭)と62頭も激減していて、先述の死亡数12頭を引くと50頭であり計算があいます。
しかし、京大、生理研ともに50頭のサルの導入元について、ここでもまた「公表していない」の一点張りで、奄美野生動物研究所で飼育していたサルかどうかも答えません。移送したかどうかすら、なぜ明かせないのか、このプロジェクトの隠蔽体質には呆れてものが言えません。

プロジェクトを終わらせる考えはあるのか?

上述のとおり、提供数はプロジェクト開始時の目標である年間300頭を大幅に下回る、平均で60数頭の需要であることがわかります。
動物実験を減らし、なくしていく、代替法に転換させていくというのが国際的な潮流です。特に国際的にも批判の声が高く、規制強化の方向性にある霊長類を動物実験に用いること自体、倫理的に問題があります。
さらに、多額の税金を投じて実施しているにもかかわらず、情報を公表しないという隠蔽体質の中で続けられ、不明点や疑問点だらけで問題の尽きないNBRP「ニホンザル」は一刻も早く終了させるべきです。
JAVAとPEACEはプロジェクトの終了を求めていますが、京大も生理研も「今後の事業のあり方については、関係各所のご指導、ご意見を伺いながら考えていきたい」としか言いません。

文部科学大臣に皆さんの声を!

現在進行している第五期は、2026年度までです。第五期でもってこの時代遅れなプロジェクトを終わらせるため、引き続き署名の拡散や、直接、文部科学大臣にご意見を届けていただくなどご協力をお願いします。

署名の集約期限は2025年3月31日

*呼びかけチラシやポップのご希望は事務局まで。

要望先
文部科学大臣 盛山正仁殿
〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号
御意見・お問合せ 入力フォーム(ライフサイエンス分野):https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry30/


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