発熱性物質試験についてのGood News!

2024年10月27日

ついに、ウサギパイロジェン試験の終わりが見えてきた<ドイツ>
-動物を使わない試験は30年前から利用可能-

この記事は「ウサギを使ったパイロジェン試験は5年以内に段階的に廃止、だが動物を利用しない試験は既に規制当局が12年前に承認済み」の続報です。

ウサギパイロジェン試験(RPT)は、輸液、ワクチン、その他の注射薬に含まれる発熱性物質(いわゆるパイロジェン)を検出する標準的な方法である。RPTでは、ウサギの耳の静脈に試験物質を注射し、体温の上昇を測定する。ドイツだけでも、毎年約6,000匹のウサギがこの試験に使われていた。しかし、今やこの試験は欧州規則から除外されることになる。DAAE〈*1〉は、このステップを「動物福祉にとって大きな成功」と評価しているが、動物が依然としてパイロジェン試験のために苦しめられている現状を批判している。

RPTは、欧州薬局方により規定されている。2024年6月、薬局方を管轄する欧州医薬品医療品質部門(EDQM)の欧州薬局方委員会は、RPT削除の改訂をした57の医薬品各条と、パイロジェン試験に関する新しい一般試験法を採択した。これにより、ついにRPTは、少なくともヨーロッパでは終了することになる。

ただし、これらの変更は2025年7月1日に新しい欧州薬局方が発行される時点で初めて有効となる。その日以降、製薬開発者は、製品のパイロジェンを管理するために、適切なin vitro試験(例えば、30年以上前に開発された単球活性化試験(MAT)など)を利用する責任を負う。

「これは動物福祉と新しいin vitroアプローチの大きな成功だ」とDAAEの副理事長であるCorina Gericke博士は述べている。同団体は、この試験に反対するキャンペーンを行い、2021年にEDQMがRPTを5年以内に廃止すると発表したことで、このキャンペーンを終了した。ウサギを使った試験の終わりは、当初の計画よりも1年早く実現できることになる。


  1. *1 Doctors Against Animal Experiments (動物実験の即時廃止を支持する医師・科学者の団体) /ドイツ(ドイツ語名:Ärzte gegen Tierversuche e.V.)

Finally : end of rabbit pyrogen test in sight (Ärzte gegen Tierversuche e.V. [Doctors Against Animal Experiments])

※発熱性物質試験について日本においては、「日本動物実験代替法学会第36回大会 参加報告」にも書かれているように、日本薬局方へのMATの収載が検討中ですが、時間がかかるということです。

科学の進歩とカブトガニの保護につながる政策変更が実現<米国>

この記事は「動物を使わないワクチンの安全性試験法を呼びかける看板 」の続報です。

PCRM〈*2〉は、このたび、医薬品製造に適用される国家安全基準の設定について責任を負う米国薬局方(USP)の政策が大幅に変更されたことを歓迎した。これまで、カブトガニの血液が危険な汚染物質(発熱性物質)を検出する能力があるとして、医薬品やワクチンなどの注射剤の安全性試験に使用されてきたが、この喜ばしい進展は、今後、カブトガニに安寧をもたらすことが期待される。

約5億年近くもの間、カブトガニは何度も絶滅の危機から生き延びてきたが、近年、新たな困難に直面していた。それは上記のようなエンドトキシン試験に使われる成分をカブトガニの血液が含んでいるため、心臓に針を刺され、血液を採取されていたのである。

今回の政策変更は、動物を使わず人工的に製造されたものを使用する非動物試験法へと大きく舵を切ることになった。これらの方法は、組換え細菌エンドトキシン試験(rBET)と総称され、従来型の血液を用いた試験と比べ、人道的であるだけでなく、信頼性と一貫性にも優れている。合成試薬を用いることで、科学者たちは従来のエンドトキシン試験に見られるような偽陽性を避けることができ、また環境変化に左右されやすい野生動物の血液への依存を避けることで、安定したサプライチェーンを確保することができる。
長年にわたりPCRMは、この政策変更を主張し、討論会、ワークショップ、研修会の開催、科学文献への寄稿、そして非動物試験法の採用を求めて議会の指導者たちと協議を重ねてきた。

PCRMの規制政策責任者のElizabeth Baker氏は次のように語った。「薬事規制の不透明さや馴れのせいで、優れた特性を持つ最新のアプローチがあるにもかかわらず、昔ながらの試験法を基準に設定する傾向がある」「今回のUSPの決定により、非動物試験が安全で代替可能な試験法であることが認められた。この変更により、企業はエンドトキシン試験に動物を用いない方法を自信をもって選択することができる」
この政策変更は、既に欧州で行われた変更とよりよく整合しており、rBETの先端科学と普及をリードしてきたイーライリリー〈*3〉がFDAと協力した結果、FDAはすでにいくつかの市販製品でrBET法を受け入れている。

この変革の機運は以前から高まっていて、USPをはじめ、民間企業や行政、さらにはカブトガニの保護に取り組む団体など、多くの人々がこの偉業に重要な役割を果たしてきた。特に注目すべきは、血液試験法とrBET法の両方を扱う企業数社が動物実験から非動物試験に移行することのメリットを認識し、団結したことである。
この進展は大きな一歩ではあるが、PCRMは、カブトガニの試験使用を全廃するための継続的な努力を今後も続けていく。


  1. *2Physiclans Communitee for Responsible Medicine (責任ある医療のための医師委会)/米国
  2. *3イーライリリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company)。米国インディアナ州に本社を置く、国際的な製薬会社

Years of Advocacy Pay Off With Policy Change That Improves Science and Protects Horseshoe Crabs (PCRM)

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