【東日本大震災】 「家族である犬や猫と暮らしたい!」

2014年10月16日

【東日本大震災レポート】

※2014年5月発行の「JAVA NEWS No.92」の記事をアップしました

「家族である犬や猫と暮らしたい!」
あの日から3年。いまも、離ればなれになったまま…。

2011年3月11日。あの日、地震、津波、火事、原発事故といった未曾有の災害が日本を襲いました。改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りいたしますとともに、被災された皆さまへお見舞い申し上げます。
そして、たくさんの動物も命を落としました。助けられなかったことの無力感は消すことはできませんが、人災によって失われた命もとても多かったことを忘れず、その教訓を今後の災害時には必ず生かしていかなければなりません。

報道が伝えた分断生活

今年の1月29日(水)、NHK「ニュースウオッチ9」の『厳冬の飯舘村 飼い主を待ち続けて』という特集で現在の避難状況が報じられました。福島原発の事故で避難を強いられ、動物を飼えない仮設住宅に住んでいる方々の中には、犬や猫を自分の家に残してきている場合もあります。
この番組が 取材していた 福島県の飯舘村では 今も およそ 200 頭 の犬とおよそ 400 頭の 猫が飼い主と 離れて暮らしているそうです。

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2~3日におきに来る飼い主を待つ飯舘村の犬たち
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写真提供 緊急災害時動物支援ネットワーク

家はあれども

福島原発事故によって今も3つの避難指示区域がある福島県。幾度かの見直しが行われ、2013年4月に新たに区域分けされました。
飯舘村は、現在3つの区域に分かれていますが、原発事故直後は20キロ圏内ではなかったため、立入禁止区域にはなりませんでした。地震の被害は小さかったものの放射線量が高いことから全村避難を決行、残された犬や猫が非常に多く、世話をしようとたくさんのボランティアが訪れるようになりました。その活動は3年経った今も続けられています。しかし住民の中には、ボランティアに対して「世話をしてほしくない、信用できない」という方もいると聞きます。遠くから通って動物の世話をするだけでも大変なのに、さらに村の自警団の方や飼い主から信頼してもらうことが必要なのですから、本当に大変な活動です。もちろん一番いいのは、一刻も早く飼い主さんの元で一緒に暮らすことですから、その道を探らなければなりません。

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ほぼ毎日世話に通う人がいるところには、周りの猫たちも集まってくる。飼い主の同意を得て18頭全てに不妊手術を行ったとのこと。写真提供 緊急災害時動物支援ネットワーク

飯舘村の事情

この報道がされた後に、飯舘村に現状を確認してみたところ、仮設住宅が動物との同居が不可である理由は、次のようなものでした。

  • 狭い中での共同生活で、動物が嫌いな人やアレルギーの人もいるため、同意が得られない。
  • そのため、全村避難が始まった当初から、出来る限り、動物保護団体等に預けることを推奨した。

確かに、飯舘村に住んでいた方で、犬を預けたという話を聞いたことがあります。またこのJAVAの問い合わせに答えてくれた職員の方も遠方の団体に愛犬を預けたそうです(残念ながら高齢だったためすでに死亡したとのこと)。動物を預けた方がいい場合もあるでしょう。しかし離れて暮らす飼い主と動物をそのままにしておいていいはずがありません。

そのためJAVAからは、環境省が「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(指針)」を作成し、「同行避難」を原則としたこと、富岡町と川内村では、「緊急災害時 動物救援本部」の義援金を受けて、仮設住宅の敷地にペットシェルターを建てたことなどを伝えて、再度、仮設住宅でも工夫して動物と暮らせるよう要望しました。難しい問題は多々あると思いますが、すでに3年という月日が経っていることや飼い主と動物のことを考えれば、この報道を見直すきっかけにしてもらいたいと思います。飯舘村には、ニュースを見て、やはり心配した人たちから何とかしてほしいと願う電話が入っていたそうです。

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首相官邸ウェブサイトの地図

仮設住宅での同居は進んだか?

震災直後から、動物と一緒に住めない仮設住宅があるという問題に対して、JAVAでは早速、全ての住宅で同居が可能だった岩手県は除き、福島と宮城の自治体に対して、2011年当時にアンケート調査を行いました。そして同居不可と回答のあった福島の9つの市町村、宮城の1つの町、合わせて10の自治体に対して要望書を送りました。

そして今回改めて、当時同居不可と答えた自治体の現状はどうなっているかを、調べてみました(電話による聞き取り調査/下記表参照)。

●仮設住宅における動物との同居可否(JAVA調査)

市町村

2011年

2014年 現状

福島県

いわき市

×

×

整備中の災害公営住宅では、1512戸中140戸を「ペット同居可」の住居とする(2014年6月~12月頃入居可予定)。ペット連れ専用のエレベーターを用意するなど、「住み分け」に配慮した構造となる。

須賀川町

×

×

現在も不可、飼っている人がいるかもしれないが把握していない。要望もトラブルの報告もない。

鏡石町

×

その後、区画を決めてペット同居可能住居を用意したが、希望がないまま現在に至る。今後同居希望者の入居者が居ればその区画に入ってもらう。

白河市

×

2011年12月からペット同居可とした。特に隔離はせず、室内飼育が条件。市に届け出と念書を出してもらった。トラブルはなし。

国見町

×

住民から要望やトラブルの報告もないが要望が出れば検討する。

西郷町

×

住民から要望やトラブルの報告もないが要望が出れば検討する。

矢吹町

×

×

要望があっても不可だが、これから建設する災害公営住宅では希望があるので検討する。

広野町

×

×

住民から要望が来たこともあるがお断りした、その後相談に乗るといったことも特にしていない。

飯舘村

×

×

現在も不可、預けることを推奨している。

宮城県

大郷町

×

住民から要望やトラブルの報告もないが要望が出れば検討する。

※xは同居不可、△は検討、○は同居可。
※避難者数はまちまちで、多いところではおよそ1,500人、一方100人以下のところもある。

JAVAからの要望を受けて、2つの自治体が動物との同居を認めるようになり、3つの町では住民の要望には柔軟な対応をしていたことがわかりました。しかし半数は、同居不可のままであったことは残念です。トラブルの報告はなかったのかもしれませんが、動物を手放したり、不便な借り上げ住宅を選んだり、泣き寝入りしていたとも考えられます。飯舘村のように問題が表面化しなかっただけかもしれません。

復興公営住宅に期待

現在、岩手、宮城、福島では避難者向けの公営住宅を建設しています。
福島県の行う「第二次福島県復興公営住宅整備計画」では、『 一部について、ペットが飼育できる住宅も整備します。』との記載がされています。これは評価できることですが、反面、次の記載がやや気になります。『建設や入居に当たっての考え方については、設置する市町村が定めます。』ここでいう『ペットが飼育できる住宅』というのは、県営の住宅に対してのことで、市町村が作る住宅はまた別の規約になるのかもしれません。

岩手県と宮城県に問い合わせたところ、宮城は「復興公営住宅は全て市町村営なので、県は関与していない」、岩手は「県営と市町村営があり、市町村は入居希望者の意向を聞いて、同居できる戸数などを決めているはず。県営も同居可能な住宅はあるが、市からの要請を受けてのこと」とのことでした。

復興・災害公営住宅は、土地の確保、自治体職員や建設作業員の不足、工事入札の不調、東京オリンピックの影響といった様々な問題で、建設自体遅れているという指摘もされています。そのように復興までまだまだな厳しい状況ですが、県営、市町村営にかかわらず、動物を連れて入居を希望される方々が全世帯入居できるように、私たちも関心を寄せ、後押ししていきましょう。

<福島県への要望先>
福島県庁
〒960-8670 福島県福島市杉妻町2-16

●復興住宅担当課
TEL:024-521-8049  FAX:024-521-9823
お問い合わせメールフォーム

●生活拠点課
TEL:024-521-8617  FAX:024-521-8369
お問い合わせメールフォーム

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