第6回国際動物実験代替法会議
動物実験廃止を目指してー代替法の進歩―
第6回国際動物実験代替法会議
第6回国際動物実験代替法会議(6th World Congress of Alternatives & Animal Use in the Life Sciences)が、8月21日~25日に東京・江東区のホテルイースト21東京で開催されました(主催: Alternative Congress Trust(国際動物実験代替法会議連合)、日本動物実験代替法学会、日本学術会議)。
今までにボルチモア、ユトレヒト、ボローニャ、ニューオーリンズ、ベルリンと世界各国で開催されてきて、今回がアジアで初めての開催となりました。
参加者は35の国と地域から1,000名以上と過去最多で、世界中から大勢の研究者や科学者などの専門家、学生、動物実験関係や代替法関係の企業が集まりました。そして、JAVAをはじめ、動物実験の廃止を目指して活動している各国の動物保護団体も、代替法に関する情報を得るだけでなく、この絶好の機会を活かして参加者に代替法の推進を働きかけるため、一堂に会しました。
5日間、英語による多くの講演、研究発表が行われ、その数は250を超え、また、ポスター展示による研究発表は258にものぼりました。「代替法の技術的な情報」「代替法の評価方法やその過程」「代替法に関する情報の入手方法」「代替法や実験に関する組織・機関の説明」「教育分野における代替法」など、発表は、多岐にわたっていました。
JAVAが推薦した3名が講演
この会議の大きなテーマに「科学者と社会との対話」が掲げられており、特別シンポジウム「市民との対話」が行われました。JAVAがこの会議の運営委員会に推薦した、次の3名の講演もありました。
Dr.チャド・サンドスキー
(動物実験に反対する医師の団体PCRMの毒性学部長兼ICAPO代表)
講演タイトル:Current and Future Technologies : Pushing the Boundaries of the 3R’s toward Replacements(現在と今後の技術:Replacement(置き換え)主体の3Rを)
ミッシェル・シュー氏
(動物実験廃止活動を専門に行い、108年もの歴史を持ち、化粧品の動物実験禁止決定などEU議会へ大きな影響力をもつ英国の団体BUAV代表)
講演タイトル:Responding to Public Concern – Advancing the Animal Protection Agenda Worldwide(世論に応えること―動物保護の課題を世界中で進める)
アンドリュー・ナイト氏
(獣医で代替法研究やその普及活動で世界的に有名なアニマルコンサルタンツインターナショナル(ACI)の代表)
講演タイトル:Animal Experimentation :The Need for Critical Scrutiny(動物実験に対して綿密な批評の必要性)
国際的な会議であることから、会場には、JAVAの提案でICAPO(OECDプログラムにおける国際動物保護委員会)の活動について紹介するブースを出しました。
ブース出展にあたり、ICAPOについて説明するパンフレットを作成し、また縦1.5メートル、横90cmの大きなポスターを作成しました。JAVAは、市民の立場から科学者に代替法の普及を求める、といった内容でリーフレットを新規作成し、英語版、日本語版を用意しました。4㎡という限られたスペースでしたが、ICAPOとメンバー団体の紹介資料を約300名の参加者たちに手渡して、動物実験ではない方法の研究・開発の必要性とともに、ICAPOの存在と活躍をアピールできました。
各国の動物保護団体との連携を強化
会議開催期間中に、海外の動物保護団体との2つのミーティングが行われました。
●ICAPOミーティング
ICAPOミーティングでは、会計報告や今後のOECD会議の参加予定など事務的な話し合いが行われました。
●動物保護団体のサテライトミーティング
14団体から23人参加しました。
まず、2005年にベルリンで開催された前回のこの代替法会議の反省と今回の会議についての意見を出し合いました。
そしてその後、動物実験をはじめとする日本の動物問題の現状についてJAVAがプレゼンテーションを行いました。内容は(1)動物実験の規制とガイドライン (2)動物実験に使用される動物の種類と数、その入手ルート (3)動物実験に対する一般の人々の反応 (4)研究者の態度 (5)動物の福祉向上への機会と障害といったテーマを中心に発表しました。
会議を終えて~私たちが進めるべきこと~
会議全体としては、代替法に関する会議であるにも関わらず、動物実験を推進するような発表がいくつもあったり、「これは研究発表とまでいえないのではないか」と思うような内容があったのも事実です。
一方で、「霊長類の動物実験使用について」をテーマに少人数でのディスカッションがあり、霊長類の実験使用について反対(動物保護団体)、賛成(研究者)、中間(霊長類学者)の立場の人たちが集まって自由に意見を述べる場もありました。考え方は相反するわけですから当然、結論が出るわけではないのですが、お互いに顔をつき合わせて話し合いをすることは動物実験廃止のためには避けては通れませんし、重要なことでしょう。
そして、発表の中にあった、「バッチ検査に関する動物実験をほぼ100%なくせる」「動物実験では皮膚ガンを人工的に移植するため、正確な結果が得られるとは限らないが、代替法だと、より正確なデータが得られる」「米国科学アカデミーの報告書では、動物実験の費用、動物実験からヒトの結果を推測することの不適切性などから、代替法を推奨している」などの発言から分かりますように、研究者、科学者といった専門家たちも、JAVAをはじめとした動物保護団体と同じく、動物実験を否定し、代替法のメリットを主張しているのです。
しかし、これも発表にもありましたが、代替法の確立、普及への弊害として、各国の「政治的背景」や「遅れた意識」があります。つまり、いくら代替法の研究が進んでも採用されなければ意味がないのです。
この国際動物実験代替法会議は、次回は2009年にローマで開催されます。その時までには、多くの代替法が確立して動物の犠牲が大幅に減り、動物実験廃止により近づくよう、研究者だけでなく、私たちも努力を惜しんではなりません。動物保護団体や市民のより一層の働きかけが必要とされています。
ICAPO International Council on Animal Protection in OECD Programmes(OECDプログラムにおける国際動物保護委員会・略称:ICAPO) ICAPOメンバー団体
■代替法3R・・・1959年にラッセルとバーチが提起した人道的な実験技術の原則 |
(JAVA NEWS NO.80より)