「まんがで読む防衛白書」~動物への暴力シーンについて~
「まんがで読む防衛白書」 ~動物への暴力シーンについて~
政府の一省庁である防衛庁が出している、若者向けの「まんがで読む防衛白書」の中に、子グマに対して少女が暴力を振るうシーンが出ていることが判明しました。
「まんがで読む防衛白書」とは、次のような内容です。
登場人物は3人‥‥ナビゲータ役の少女『でこ』は、「好奇心たっぷりだけど、ちょっと血の気が多い」少女で、タカ派的な考えの持ち主。子グマ『デコポソ』は、「平和好きなクマ」と紹介されています。三人目の『SE/30(説明好きなオールドMac)』は、防衛や自衛隊の必要性を説明する存在として描かれています。
問題の”暴力シーン”は、少女『でこ』と子グマ『デコポソ』が日本の防衛に関して議論をしていく中で起こります。「日本は戦争放棄シタ平和国家デス。ぼ‥防衛って何デスか?!」と詰め寄るデコポソに対して、少女でこが「うるさいよ、戦争戦争って。防衛の話だっていってんだろうが」と、突然子グマを足で蹴り飛ばし踏みつけるシーン。そして同じく、基地返還を主張するデコポソを、少女でこが「沖縄はね‥米軍の存在が必要なの!!」と、有無を言わさず殴り飛ばすシーンです。
少女『でこ』は、子グマ『デコポソ』が自分と異なる意見を言うたびに、すぐにキレてしまい、相手を暴力で屈服させようとする少女として描かれています。最近、青少年による殺傷事件が多発していますが、それには、自分と相手の間に考えの違いや軋轢が生じると、すぐにキレ、相手に暴力を振るってしまう、さらに、身近な動物に対して暴力が爆発し虐待する傾向にある‥という共通点があります。
そして、過去に凶悪犯罪を起こした青少年の多くが、凶悪犯罪に至るその前段階において小動物への虐待を行なっていたという事実は明らかであり、動物虐待と凶悪犯罪との密接な関連性は、広く認識されるようになってきました。そんな最中、政府系の出版物の中に、動物に対する暴力シーンを掲載すること自体、極めて無神経であり、許されることではありません。
JAVAは、出版直後に「まんがで読む防衛白書」の管轄機関である防衛庁に対して、暴力シーンの描写の削除を求めて口頭で抗議した上で、改めて要望書を提出しました。
JAVAの要望に対して、防衛庁は、「次の18年版もまんがの防衛白書を発売する予定にしているが、出版直後に指摘を受けたので、今回は動物への虐待シーンはないように出版社に依頼し発注した」と回答しました。
「社会的に最も弱い立場にある動物に対するやさしい心を育むこと」は、今や、日本社会に対して科せられた大きな問題です。今回の防衛白書の件に限らず、これからも、行政機関に対して、また、社会的に大きな影響力をもつ出版物やマスコミに対しては、特に、厳しいチェックの目を向けていく必要があります。
(JAVA NEWS No.78より)