「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」が成立
多数の市民の反対を押し切って
「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」が成立
市民や動物愛護団体から非難され撤回を求められていた主題の条例案が、「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」として、3月20日、京都市議会本会議にて可決、成立し、7月1日から施行されます。
京都市は、昨年12月15日から今年1月14日までの1ヶ月間、この条例骨子に対するパブリックコメント(市民の意見)募集を実施しましたが、「3,005件の意見が寄せられ、そのうち2,245件が、猫への規制に反対する意見だった」と読売新聞(2月21日付)に掲載されています。この数字だけでも、大きな問題を抱えている条例骨子であるのは一目瞭然です。JAVAは、1月13日、京都市に対し、「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」は廃案にし、動物愛護に関する条例を制定することを求め、罰則付きの禁止事項に反対する意見を提出しました。今回その一部をご報告いたします。
骨子案全体に対するJAVAの反対意見
京都市が検討中の「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」骨子は、動物愛護や動物の習性に何ら配慮することなく、「ふんの取り締まり」「餌やりの取り締まり」「多頭飼育の届け出」を義務づけ、動物を「まちの美観を損なわせる存在」としているに等しい。このことは、まさに、「動物をモノと同一視している」という姿勢を露呈するものであり、明らかに、動物の愛護及び管理に関する法律の理念と目的に反している。
骨子は、ただただ人への迷惑の防止に終始し、肝心の動物愛護に関する規定は全く設けられていない。これでは、「犬猫はふん尿をするから汚いもの。まちの美化のためには、犬猫を排除しても良い」などといった、虐待などの犯罪を誘発しかねない極めて危険な認識を、行政自ら市民に植え付けようとしているのも同然である。
動物虐待を発端とした凶悪犯罪が後を絶たない現状にあって、今、急務とされているのは、行政が率先して動物愛護の普及に努め動物虐待を厳しく取り締まることであり、それによってはじめて、社会的秩序と安全が保たれ、人間の命が尊ばれる福祉社会を実現することができるのである。骨子のように、動物の愛護及び管理に関する法律の理念に反する内容を条例として提案することは、市民の動物愛護意識を低下させ、さらなる動物虐待の温床を作ることに他ならず、決して容認できることではない。
このような形のまま、同条例が制定、施行されることになれば、市民の動物愛護意識と社会的モラルを著しく低下させ、ひいては、動物虐待などの犯罪をも誘発しかねない。
よって、当会は、動物愛護に反し、京都市民の低モラルを国際社会に喧伝するような、「京都市動物による迷惑の防止に関する条例(仮称)」は速やかに廃案にするべきと考える。
罰則付きの禁止事項に対するJAVAの反対意見
<骨子案>
身近にいる動物に対し無責任な給餌(餌やり)をしたり,残飯ごみを放置したりしてはならないこと。
餌やりを規制することは、「地域猫活動」を妨げることになる。
地域の野良猫たちに不妊去勢手術や定期的な餌やりを行うことで、野良猫を減らし、ゴミ荒らしなどを防いでいく、といった「地域猫活動」が全国的な広がりをみせているように、「野良猫の増加」「猫のふん尿」などの問題は、動物愛護を基盤にした、地道な息の長い地域ぐるみの取り組みによってしか、根本的な解決の道はない。横浜市磯子区、東京都千代田区や新宿区のように、行政と連携した本格的な活動を行う市民グループも増えているが、このような取り組みも元をたどれば、一人、二人の市民による取り組みが発展したものである。京都市においても、「まちねこ活動支援事業」を実施されているが、「3人以上の活動団体を作る」「町内会等の合意を得る」等ハードルの高い内容になってしまっている。
「地域猫活動」の捉え方は様々であり、たとえば「地域住民には話してはいないが、自分のできる範囲で不妊去勢手術だけ行う」「給餌給水や排泄物の処理はできないが不妊去勢手術だけ行う」といった取り組みをしている市民もいる。これらも野良猫の削減につながる貴重な取り組みである。
ところが、骨子では、「まち猫活動支援事業のルール通りに行わない地域猫活動」=「違反行為」としており、つまりは、上記のように「自分のできる範囲で」と野良猫の数を減らすために貢献してくれている市民を「違反者」「犯罪者」とするもので、到底容認できない。
野良猫を減らすための活動は、ボランティアで行われている活動に大きく依存していることからも、ボランティアを増やすことが重要である。そのためには、その取り組みを細かく規定しすぎてハードルをあげたり、厳しく縛りつけるべきではない。万が一、今回、この条例が制定されたなら、「地域猫として世話をしている猫がふん尿をしているからと、責任を負わされることになるかもしれない」、「地域猫の活動を理解せず、快く思っていない人から市に通報されるかもしれない」といった精神的重圧から、活動から手を引く人が出てくるのは必至である。この餌やり規制は、何のメリットもなく地域の市民活動を阻害するだけである。
<7月1日から施行される条例>野良猫などへの餌やりに関して京都市から受けた命令に従わないと、10月1日より、5万円以下の過料
<骨子案>
犬又は猫の多頭飼育時に届け出ること。(生後91日以上、犬5頭以上、猫10頭以上又は犬猫合わせて10頭以上)
多頭飼育が不適正飼養や周辺環境への問題につながりやすい、またそういった問題が発生していることは事実と考える。しかし、具体的な頭数で届出制等の規制をかけることは明確な根拠がない。10 頭以上は問題で、9 頭なら問題ないのか、といったことになってしまう。また、1 頭でも不適正飼養や周辺環境への問題に繋がっているケースも多々ある。さらに、むやみに規制をかけることは、動物保護のボランティア活動を行っている人たちの活動に支障の出る恐れが大いにある。
<7月1日から施行される条例>
生後91日以上である、犬5頭以上、又は犬猫10頭以上(犬の数が4頭以下の場合に限る。)のいずれかの多数の犬猫の飼養や保管する届出をしなかった場合、10月1日より1万円以下の過料
<骨子案>
犬が散歩時にしたふんを回収すること
まちの美化を守ることの大切さは理解するが、同条例によって、「飼い犬のふんの放置は条例違反」などとなれば、つまりは、京都市が多くの市民を犯罪者に仕立て上げることになる。「あなたは飼い犬のふんを放置しているから、犯罪者だ」「条例違反だから、市に通報します」というような空気が市内に広がれば、近隣住民同士の啀み合いやトラブルが発生し、暮らしにくいまちとなってしまう。看板の設置、チラシ回覧、広報誌での呼び掛け等、これまで実行してきたであろう対策をさらに充実させ、他にも様々なアイデアを出し、平和的に解決すべきで、条例を持ち出して市民を束縛したり、押さえつけるような方法を取るべきではない。
<7月1日から施行される条例>
犬のふんを飼い主が回収しなかった場合、10月1日より3万円以下の過料
「動物の愛護及び管理に関する法律」では、「動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する」との目的が定められ、また、基本原則では、「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」と謳っています。
しかし、今回成立した京都市の条例は、野良猫、飼い猫の差別化を図り、野良猫の排除を目的としていることは明らかであり、動物の愛護及び管理に関する法律の理念に真向から反しています。また、行政が、社会的弱者である動物に手を差し伸べる市民の優しい気持ちに圧力をかけることは、子供の倫理観、感情発達にも悪影響を与える結果になることは必至です。自治体の条例により、切り捨てられる命がないよう、私たちは真の動物愛護行政を求め、動物の命を大切にした、条例の制定を求めていかなくてはなりません。