被災動物たちの苦しみは終わらない
<東日本大震災レポート>被災動物たちの苦しみは終らない
震災から1年以上が経ち、被災動物への関心が薄れ始めています。
しかし福島では、いまも動物たちの苦しみは続き、繰り返されているのです。
●宮城県の犬猫シェルター
宮城県のシェルターを2011年11月に訪問。飼い主から預かっている犬10頭、猫2頭、里親募集の犬10頭、猫1頭がいた。獣医師、有給スタッフ、地元ボランティアでやりくりして医療ケアを含めた世話がされていたが、いまだに被災者から新たな引き取り依頼も入ることもあると聞いた。今年3月に役目を終え閉所された。
●福島県の犬猫シェルター
倉庫に所狭しとケージが並び、犬を毎日散歩に出せない第1シェルターには、非難もかなりあった。第2シェルターが2011年11月から運営され、頭数が分散されたことで飼育環境は良くなった。しかし、行政や一時帰宅の飼い主により保護された動物の入所は続き、頭数は減っていかない。
飼い主がわかっていても、避難先の住宅問題で引き取れない場合も多い。JAVAでは、仮設住宅での家庭動物の同居を不可にしている10の自治体に対して、同居許可を求めた。
なお、震災対応のため国の指示で作られた緊急災害時動物救援本部のシェルターは、今年1月に閉所。行き先のない犬猫は、動物病院や東京都動物救援センターが新設したシェルターへ移された。
【福島県動物救護本部による管理頭数】 犬143頭、猫145頭 (2012年5月現在)
●さまよう犬や猫たち
警戒区域に残された犬猫などのレスキューの多くは、行政ではなく、民間の動物保護団体やボランティアによって行われてきた。警戒区域内外にて今も継続した活動をている人たちに、心から敬意と感謝を表したい。
現地には行かれない人は、国や国会議員に動物救出を要望してきたが、行政の救出活動は満足のいくものには至っていない。昨年11月JAVAは、被災地ではあるが市長が強いリーダーシップを持つ南相馬市へ、「救出」と「保護に向かう者の立入許可」をお願いしたが、期待に応えてはもらえなかった。同時に総理、環境省、福島県に何度目かの救護要請を行った。
2012年12月に3週間だったが、皆が待ち望んでいた民間の動物保護団体による警戒区域内での保護活動が実現した。行政より保護頭数が多かったのは、経験と強い決意による結果だろう。市民の声に押されて環境省も保護活動を続けてはいる。今年度には約1億円の予算をつけて保護業務を委託した。
そして最近は、原発20キロ圏外でも新たな問題が起きている。区域再編により線量の高い飯舘村の一部が封鎖となるため、その地区の犬猫への対応が求められる。
【行政による保護】 犬428頭、猫321頭 (2011年4/28~2012年3/19)
【民間団体による保護】 犬34頭、猫298頭 (2011年12/5~12/27)
【一時帰宅時の住民自身による保護】 犬2頭、猫6頭 (2012年1/29~4/12)
※2012年4月環境省発表
■ダチョウや豚たち
昨年12月にダチョウ楽園を訪ねると、10月にいた4羽はいなくなっていた。農林水産省が捕獲に乗り出したり、委託研究にダチョウを含めたことから実験利用を心配したが、元の4羽+2羽が施設に戻った。その後1羽不明となり現在5羽。世話はしているようだが頻度はわからず、餌はドッグフード、水は汚れた川から、と決して良い状態ではない。所有者は研究利用を希望して生かすことに積極的ではないだけに行く末が心配だ。
企業の所有が多かった豚は、早い時期から殺処分が行なわれ約3,200頭が殺された。
■被災動物から実験動物へ
20キロ圏内にいた動物に対して以下の動物実験が行われている。
□東京大学
・茨城の附属牧場に原種豚26頭を移動、生殖機能研究
・警戒区域内にて行政が安楽殺した牛(胎児含む)と豚を利用、放射性物質レベル研究
□北里大学
・南相馬市にて牛約30頭、プルサーマル摂取による除染研究
※実験は終了したとみられるが6月の時点では約20頭がまだ飼育されていた。今後は不明。
□東北大学加齢医学研究所
・警戒区域内にて行政が殺処分した牛約150頭(胎児含む)、内部被ばくやセシウム等の研究
□警戒区域内家畜保護管理特命チーム(酪農学園大学、東北大学、岩手大学等)
・南相馬市にて牛約60頭、汚染された畑と森を牛の採食や排泄行動を利用した除染・再生の研究
□創生ワールド株式会社(民間企業)
・浪江町にて牛16頭、富岡町にて牛約40頭、自社製品『創生水』による除染研究
※実験以前の飼育状況に、虐待があり数頭が死亡
被ばくした畜産動物を「生かすため」の方法として、実験・研究への利用があげられるのは許し難いことだ。農家は、殺処分には反対でも研究に使って殺すということには賛成する人が多い。何かの役に立てたいという気持ちが強いのだ。農家の「生かしたい」と、動物愛護の「生かしたい」は同じではない。畜産動物の保護が難しい一面でもある。
■虐待される牛たち
放れ牛が住居に入ったり車と衝突することを防ぐために、昨年秋から捕獲作業が加速した。
捕獲して耳漂を調べ所有者に殺処分の同意を求めるのだが、その間牛たちは屋根もない囲み柵に拘束される。鉄パイプの簡易な柵の多くは、使用許可を得た田んぼに作られる。生えていた草は飢えた牛たちが食べ尽くし、元々ゆるい地盤に牛糞が混ざり、歩き回ることですぐにグチャグチャになる。雨でも降ろうものならば、牛の膝あたりまでドブのようになる。
そしてその中で、生きている牛と泥沼につかった死んだ牛が混ざっている柵もあるのだ。見るに耐えない状況。震災直後の餓死という最悪の事態をまた繰り返すのか。このような光景が楢葉町、富岡町、大熊町などで見聞きされ、JAVAは福島県と各市町村に抗議を行った。
さらに別のことでも牛たちは苦しんでいる。通常牛には、「たてご」と呼ばれる目と鼻の間を通って顎と耳の後ろにつながる紐が掛けられている。成長に合せてその紐は調節されるのだが、1年以上放置された紐は、凶器となって彼らの顔に食い込み、口も開けられなくなるのだ。また、極限まで痩せた牛も少なくない。
【震災前の飼育牛】 3,500頭
【餓死等による死亡】 1,700頭
【安楽死処分】 839頭
【捕獲(畜主による管理牛含む)】 731頭
【放れ牛】 約250頭
※2012年4月農林水産省発表
いまも苦しんでいる福島の被災動物たちを助けるために、私たちができること 私たちの声や行動が、動物たちを苦しみから助けることにつながります。 ★要望する ★里親やホストファミリー(一時預かり)になる ★保護団体やシェルターを支援する |