化粧品業界団体は動物実験問題をどう考えているのか

2015年4月17日

化粧品業界団体「日本化粧品工業連合会(以下、粧工連)」を介して行われた2013年末のアンケート調査において、「代替法の利用は考えていない」という企業が半数にも及ぶという由々しき事態が明らかになりました。
そこでJAVAでは2014年11月、粧工連に対して、ウェブサイト上では「動物実験代替法の普及活動に注力している」と大見得を切りながら、業界内では代替法がまったく浸透していない実態であることを指摘し、どのような対策を考えているか等、10項目にわたる詳細な公開質問状を送付しました。

📤JAVAからの質問内容(PDF)

  1. 粧工連が行っている「動物実験代替法の普及活動」とはどのような活動を指すか。
  2. 粧工連の技術委員会では、参加企業に対して、動物実験代替法の活用促進など代替法の普及のためにどのような周知活動をしているか。
  3. 粧工連では、会員企業に対して(東京化粧品工業会、西日本化粧品工業会及び 中部化粧品工業会の3工業会を通じるなどして)、動物実験代替法の活用促進など代替法の普及のためにどのような周知活動をしているか。
  4. 粧工連の技術委員会に参加する企業44社を対象に送付された「代替法ガイダンスに関するアンケート」に対して8社が回答しなかった理由・原因は何だと考えるか。
  5. 同アンケートの設問3「これまで発出されたガイダンスのうち、今後新規医薬部外品の薬事申請に利用しようと考えている試験法はあるか」に対し、「試験法の技術習得が困難」という理由を挙げて「利用は考えていない」と回答している企業があるが、この問題を解消するために、粧工連ではどのような対策を考えているか。
  6. 同設問3に対し、「申請に通常より期間がかかりそうで心配」という理由を挙げて「利用は考えていない」と回答している企業があるが、この問題を解消するために、粧工連ではどのような対策を考えているか。
  7. 同設問3に対し、「他の試験も含め、動物を使用するので完全に代替できないため。又、できる試験機関が限られている。費用も高かったため」という理由を挙げて「利用は考えていない」と回答している企業があるが、
    1. 「他の試験も含め、動物を使用するので完全に代替できないため」という理由の背景には、3Rs、とりわけReduction(削減)及びReplacement(完全な代替)の概念が十分に浸透していない現状があるものと考えられるところ、粧工連では、会員企業に対して(前出の3工業会を通じるなどして)、動物実験のReductionやReplacementの必要性をどのように周知させているか。
    2. もしまだ周知させる取り組みを行っていない場合は、今後、どのように周知させていく予定か。
    3. 「できる試験機関が限られている。費用も高かったため」という問題を解消するためにどのような対策を考えているか。
  8. 同アンケートの設問4「これまでに、新規医薬部外品の薬事申請に代替法を利用した経験があるか」に対して、81%にあたる29社が「ない」と回答していることについて、この状態を改善するためにどのような対策を考えているか。
  9. 同アンケートの調査結果は、動物実験が必要とされる医薬部外品等の承認申請に関して、政府が代替法利用を促す文書を通知し、粧工連も参画する「医薬部外品等の安全性試験法に関する代替法ガイダンス検討会」がガイダンスの作成に尽力し、政府がそれらを発出しても、企業においては動物実験による申請を続けているなど、ガイダンスが有効に機能していないことを示しているが、実際に動物実験を削減・廃止するためには、どのような方策が有効だと考えるか。
  10. EUをはじめ、イスラエル、インド、ブラジル・サンパウロ州では化粧品の動物実験は法的に禁止され、米国、韓国、台湾、オーストラリア、ニュージーランド等では禁止法案が議会に提出されるなどの動きがありますが、日本において、化粧品の動物実験を廃止するためには、禁止を含む法規制が必要だと考えますか。以下、当てはまるものに○をつけてください。
    1. 禁止を含む法規制が必要
    2. 業界の自主規制で実現可能
    3. その他(具体的に)

それに対する回答は、各質問項目に対して答えずに見解のみを書き連ねてくるという〈はぐらかし〉のパターンでした。そして「動物実験か代替法かの選択は企業の自主的判断によるものだから、自分たちはそこまで責任を負わない」という言い逃れに終わりました。

📥粧工連からの回答(PDF) ※下記太字はJAVAによる

化粧品は人体に直接使用するものであり、消費者の安全性確保を最優先することは、市場に化粧品を提供する者に課せられた最も重要な責務です。日本化粧品工業連合会(以下、粧工連)では、このような社会的責務をまっとうするため、種々の業界指針を整備し、傘下会員に対してその普及を図っています。動物実験代替試験法についても、いわゆる「3R」の原則に基づき、行政や関係学会と連携してガイダンスの整備を進めてきたところです。

動物実験代替試験法の普及・利用促進について、粧工連では、1991年から技術委員会の下に動物実験代替専門委員会(現在、動物実験代替専門部会)を設置し、動物実験代替法の開発・評価の取組みを推進してきました。また、日本動物実験代替法学会に対して、1990年の発足以来、継続して支援を行っています。こうした取組みの成果として、一部の試験においては国際的に認められた代替試験法が確立してきています。

さらに、これらの代替試験法の周知に関しては、粧工連参加会員に対して技術情報として提供するだけでなく、近年は非会員の皆様にも広く活用できるようホームページ掲載も行っています。

もとより、化粧品の安全性確保は一義的には各企業の責任であり、動物実験代替試験法の活用はあくまで各社の自主的判断に基づいて行われるべきものですが、粧工連においては、国内外の最新の情報を提供し、代替試験法の積極的な活用を推進するよう要請していくこととしています。

粧工連としては、今後ともこれら取り組みを通じて国際的に認められた代替試験法の確立、普及活用を目指して、関係機関と連携して積極的に努めて参ります。

粧工連はいつまでもこのような傍観者的なスタンスでよいのでしょうか?この1~2年で禁止に向けた動きが加速し、代替法研究開発の予算も日本とは桁違いに増えている隣国・韓国では、化粧品業界団体「韓国化粧品協会」が国会議員や行政当局との協議に積極的に関与しています。
粧工連には、日本特有の悪しき事なかれ主義から脱却して、すでに国際的にコンセンサスの取れている化粧品の動物実験廃止に向けて、堂々と歩を進めるよう、意見を伝えていきましょう。

日本化粧品工業連合会(粧工連)
〒105-0001
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メトロシティ神谷町 6階
TEL 03-5472-2530 FAX 03-5472-2536
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