株式会社生活の木にお話を伺いました
2011年11月5日
ウサギのマークが『気づき』につながる!
“NO ANIMAL TESING”の表示を始めた「生活の木」にインタビュー
ハーブとアロマテラピーの専門店「生活の木」が、今年に入ってから、取り扱っている化粧品に“NO ANIMAL TESTING”(動物実験していません)のマーク表示を始めました。2008年にJAVAが行なった化粧品アンケートに対して「今後、消費者にわかり易いように、動物実験を行っていない旨を表すマークを表示する事を検討中」との回答をいただいていたので、実現されたことに私たちは大喜び!
表示に至るまでの経緯やナチュラルコスメ業界の動向について、株式会社生活の木 商品開発DIV マネージャーの阪東忍さんにお話を伺いました。
- JAVA
- 今日はお忙しいなかお時間をとっていただきましてありがとうございます。
- 阪東
- よろしくお願いします。
- JAVA
- 私も7月に店舗に買い物に行ったときに拝見はしていたのですが、「生活の木さんで動物実験していないマークの表示が始まっているようです」と消費者の方から当会の事務所に連絡がありまして、以前私たちのアンケートにご協力いただいたことも踏まえ、きちんとご挨拶しなければ、と思いまして本日は参りました。
- 阪東
- ありがたいです。今年3月の末頃に発売した化粧品からマークを順次入れていっています。それ以前に発売していたものに関しては当然動物実験はしていないのですけれども、新しくパッケージの版替えがあったり新商品が出るときにはマークを入れていく方針でおります。
- JAVA
- まずは会社についてご紹介いただけますか?
- 阪東
- 私どもはハーブとアロマテラピーを中心に扱っているメーカーなのですが、一般のお客様には店舗をご利用いただいているので、小売業のようなイメージを持たれている方も多いと思いますが、メーカーとしてオリジナル商品を作っています。全国に約100店舗ある直営ショップで扱っている商品も95%近く自社ブランドのものです。世界51カ国にパートナーファームと呼んでいる提携の農園がありまして、そこで作ったハーブを原料で仕入れてきて、自社でストックしています。それを二次製品に加工したり、商品を作ったりしてお客様にご提供しておりまして、自社の店舗で売る商品もあれば、業者さんに卸として販売するものもありますし、原料の販売もいたしますし、そういったことを総合的にやっています。それ以外にも、ハーブとアロマテラピーに関することなら何でも任せて欲しいというスタンスでおります。ハーブスクールやアロマスクールといった教室や、旅行業も行っていて、お客様をハーブの産地にお連れしたりといったツアーの企画もしています。
- JAVA
- アーユルヴェーダ(※インド・スリランカの伝統的医学。ヨガと並んで人気のセラピー)とかでしょうか?
- 阪東
- そうなんです。アーユルヴェーダのホテルがスリランカにありまして、そちらにお連れして施術を受けていただいたりだとか、現地でアーユルヴェーダの資格をとるようなコースも作っております。
- JAVA
- ハーブ・アロマテラピーに関して、総合的に取り扱っておられるのですね。原料で卸もされているとは知りませんでした。会社の設立はいつですか?
- 阪東
- 1955年です。創業から55年以上経っていますが、ハーブを始めた歴史としては30年強です。
きっかけは「お客様からのお問い合わせ」
- JAVA
- NO ANIMAL TESTINGのマーク、結構大きく入れてくださっているんですね。素晴らしい!最初に社内でマークを入れてはどうかと提案があって、じゃあ表示をしましょう、という話になったと思うのですが、そこに至るまでの経緯とは?
- 阪東
- 前々からマークを入れたいとずっと思っていました。ただ、会社としてきちんと動き出すきっかけとなったのは、やはりお客様からのお問い合わせです。「動物実験していますか?」というお問い合わせをお手紙なんかでいただいて、毎回毎回「していません」という回答はしていたんですけれども、こういったことに意識を持たれている方がたくさんいらっしゃるのであれば、商品を見たときにすぐにわかるようにしておけば、お客様に対しても親切ですし、私たちの姿勢も伝わりやすいのかなと思いまして。
- JAVA
- お聞きしてうれしい経緯です。「動物実験していない」というマークがあるととても買いやすい。マークがないと、お店の人に聞かなくちゃとか、お店の人に聞いてみたけどわからなかったから改めて会社に電話しなくちゃとか、ワンクッション、ツークッション必要なんですね。マークがあれば安心して買えるのでぜひつけてくださいという要望は、たぶん潜在的に多いと思います。・・・社内で提案されて、みなさんすぐ賛成を?
- 阪東
- まったく反論もなく話が進みました。私たち商品開発は商品を作っている部門なので、動物実験をしていないというのは当然わかっているのですが、社内でも「お客様からこういうお問い合わせがあったけれど、どうしましょう?」と聞かれることもありました。
- JAVA
- お客様から直接聞いた社員の方が、商品開発の方に確認されていたわけですね。
- 阪東
- 「動物実験していない」ということが社内にも浸透すれば(マーク表示に際して社内レクチャーすることで)スタッフも安心してお客様に説明ができますし、自信を持って販売ができるようになるんじゃないかと思いまして。
- JAVA
- 社内では、ウサギのマークを歓迎をしてくださっているというような雰囲気ですか。
- 阪東
- そうですね。
- JAVA
- うれしい限りです。実際表示を始められてから、お客様から反響は届いていますか。
- 阪東
- 「マーク入ったんですね」というようなお声はいただいてはいないですが、動物実験していますか、というお問い合わせはなくなったように思います。それは、JAVAさんの冊子(※JAVAコスメガイド)にも載せていただいているので、それもあるのかなと思うんですけれども。
- JAVA
- コスメガイドだけでなく、いろいろな動物保護団体や個人の方も動物実験していないメーカーをブログに出したりしておられるので、結構浸透してきているのかな・・・
ウサギのマークが知らない人の気づきにつながる
- 阪東
- たぶん動物実験が行なわれているかどうか興味もないというか、そんなことが行われているということを知らないでいる方もたくさんいらっしゃると思うんです。知らないから特に気にせずにいままで買っていたけれども、このマークを見て、「あ、そうか」と思って、気づいてくださる方がいらっしゃったらうれしいです。
- JAVA
- マークの表示が「気づき」につながります。私たちの活動は、「動物実験はこんなに残酷なことが行われていて…」というようにかわいそうな写真をお見せして知っていただくのが基本のスタイルなのですが、その方法だとどうしても入ってこれない方がいらっしゃって。それが、このマークのように興味を引くようなかわいらしいものであれば、残酷なものは見たくないという人も、ふと「なんだろう?」って思ってくれるんじゃないかしら。いまは家に帰ればインターネットですぐに調べられるじゃないですか。その入り口になってくれるのかなぁと、そういう気がいたしました。このマークも、本当に素敵です!このハートが特に。
- 阪東
- このハートをどうしても入れたくて。これがポイントだったんです。やっぱりかわいくなくちゃいけないということと、あとはそれを心で感じていただきたいということでハートを入れたいな、と。
- JAVA
- とても素敵な観点です。海外には動物実験していないというマークがたくさんありますが、ドイツのマークはウサギに手をのせているもの。EUのは星のマークにウサギが飛んでいるリーピングバニー。アメリカだと、耳がピンクのハートマークになっているウサギなどがありますね。・・・同じ業界の中で他社の反応はありましたか?
- 阪東
- まだ、業界内での反応というのは基本的には実感していない状態です。自然化粧品やアロマテラピーの商品は、輸入ブランドが多く、それもヨーロッパのものが多いから、そもそもマークが最初からついている場合があり、私たちも最初わからずに「何かこのマークに決まりがあるのかしら」なんて考えたりしていましたが、日本国内ではこれという決まったものがないようで、皆さんまだ表示されないみたいですが、表示してお客様にとって何か不利益がなるわけではないですし。
- JAVA
- 不利益どころか助かります。たとえば英国発祥の動物実験反対を訴えてくださっているブランドなど、私たちとしてはその存在をとてもありがたく思っているのですが、それとはまた違ったかたちで日本の国内のブランドが動物実験していないというマークの表示を始めてくださったことは本当に喜ばしいことだと思っています。ところでアロマテラピーやハーブ、ナチュラルコスメとか、自然療法とか、ナチュラル志向の業界の中では、動物実験に対する意識、動向は、どんな感じなのでしょう。
- 阪東
- (動物実験の有無に関しても)意識の高いお客様が多いということは感じています。業界的にどうかというと、そもそも、ハーブ・アロマテラピー関連では、歴史的に長い間使われてきた原料を使うので、新たに動物実験の必要性はないと思っているのではないでしょうか。あとはアロマテラピーがヨーロッパから伝わってきた文化なので、EUの方が動物実験に対する意識が先に進んでいますから、動物実験をやるというアイディア自体がそもそもないのかな、という気がします。使っているエッセンシャルオイルの品質のデータシートにLD50値(※ある物質をラット・モルモットなどの動物群に投与した場合、その動物群の半数が死亡する用量)が書いてあったりすると、かつてどこかで動物実験されたんだろうなと思うんです。ただ、その原料が扱われ始めてから何十年も経っている今になって新たにやっているということはないですし、当然ヨーロッパではもうやっていませんからね。
- JAVA
- この活動を続けるなかで「そんなこと言ったって、過去にはどんな原料だって試験をして市場に出てきたじゃないか」とよく言われます。動物実験による犠牲があって、安全が確認されたものじゃないか、と。でも、それを言い出してしまうと、過去に動物を犠牲にしたものは全部だめだということになってしまう。つまり、お化粧自体がNGになってしまうんですよね。そうではなくて。動物実験を望まないというスタンスは、なにも前時代的な生活をしろと言っているわけではなくて、確かに過去に動物を犠牲にしてきたけれども、もう十分じゃないか、せめてこれからはやめようよ、と言っているんです。現実的に動物のことを考えたら、こういうスタンスが一番自然で有効かなというふうに思います。ところでEUで2009年に化粧品の原料に対しても動物実験が禁止になって、国内の最大手も自社ではやめましたとなって、そのような動向を、業界の中にいらして、どのように受け止めてらっしゃいますか。
- 阪東
- 「こういう動きがあるという情報自体知ってはいるのですが、日本の化粧品業界は、足並をそろえているところがあるのかもしれません。だからなかなか業界として次のアクションを起こせるというような状況ではないのかな、という感覚ではあったんですね。ですが、私たちはナチュラル化粧品という位置付けなので、動物実験していないということが当たり前になりつつあると、何となく肌で感じていましたね。
- JAVA
- 東急ハンズやロフトには、ヨーロッパのナチュラルコスメ系のブランドが常に入っているのですが、それらには、動物実験していないマークやエコサート(※フランスにある国際有機認定機関)の認証マークなど、いろんなマークがついています。オーガニック・ナチュラルコスメの業界では、もうそれが当然という印象を受けています。
- 阪東
- オーガニックコスメを探してらっしゃるお客様は、いままではもうそれこそドイツ等のヨーロッパブランドのものを買っていた方も多く、選ぶポイントの一つとして認証マークがあるかどうかというのもあると思うので、認証マークや、「動物実験していない」というような企業の考え方を示すマークの表示は今後増えてくるんじゃないかと思います。
- JAVA
- 企業の考え方、というつながりで申し上げると、資生堂の動物実験廃止に向けての取組についてですが、この問題の担当部署がCSR部なんです。いままでこういった運動は、いうなれば苦情・クレームの扱い。昔は、自分だけが動物実験していないものを使っていればいいという、単なる動物好きなお客さんというくくりだったのですが、「動物の命も大事にしましょう」という考えが消費者全体の認識だと捉えられるようになってきました。社会全体の価値観、意識は変わってきているような気がしますね。
- 阪東
- オーガニックの考え方とすごく似ている気がします。食品でもなんでも私たちがオーガニックのものを選んでくるのって、自分が可愛くて健康になりたくて、それで選んでくる場合が多いんですけど、特にオーガニックコットンに言えることですが、オーガニックコットン自体が肌に優しいからとかそういう話ではなくて、農薬を使わないことで作っている方たちの健康被害がないようにして、周辺の自然とか土壌汚染を防ぐ、という考え方が出発点なんだ、という話を聞いたときにすごく感じるものがありました。どうしてもやはり人って自分中心になりがちですが、私たちはそれほど不自由のない生活をしているじゃないですか。なので、もう少し先広く考えて、自分だけじゃなくて、他のもののことを考えられるような生活の方が豊かなんじゃないかなって。
- JAVA
- 豊かといえば、まさに化粧品には、心を豊かにしてくれる力がありますよね。外見をきれいにすることで心が豊かになるのであれば、さらにそのツールである化粧品に、動物の犠牲がないものを選んだら、気持ちの持ちようが全然違うと思うんです。
- 阪東
- 動物実験していないものを使う、そのほうが本当の意味できれいになるような気がします。
かつて犠牲にしてきたけれどこれからはやめようよ
他者を考えられる豊かさが本当の美しさへ
(了)
インタビュー:2011年8月26日
文:JAVAスタッフ 亀倉弘美