毛皮産業への新型コロナウイルス感染症の影響

オランダ

2020年4月26日、南部にあるノールトブラバント州内の2か所の毛皮農場でミンクにCOVID-19が確認されたことを農業・自然・食品品質省が発表しました。その2か所の農場の従業員に感染症状が見られた後にミンクの検査が行われ、ミンクにも呼吸困難などの症状が見られました。この州はオランダ国内でCOVID-19が発生した地域で、毛皮産業の中心地でもあります。
6月3日時点で、国内には128か所のミンク農場があり、そのうちの8か所でミンクにCOVID-19が確認されました。その後感染が確認されたミンク農場の数は増え続け、17か所のミンク農場で感染が確認されたことを受け、6月23日オランダの議会で、現存する128か所のミンク農場の閉鎖と「コロナウイルスに感染しやすいすべての動物の飼育禁止」「ミンクの輸送禁止」「ミンクがすでに殺処分されている農場が再び飼育することの禁止」などについて投票され、賛成票が多数を占めました。
オランダでは、2023年末までにミンク農場を段階的に廃止する予定でしたが、今回の投票では大多数の国会議員がそれよりも早く農場を操業停止することを支持しました。
そして8月28日、農業・自然・食品品質大臣が、2021年4月までにすべてのミンク農場を閉鎖すると発表しました。政府は、ミンク農場の従業員に対し、補償金として1億8,000万ユーロ(約226億円)を支払います。
9月9日時点では50か所でのミンク農場で感染が確認されており、殺処分されたミンクは200万頭以上と報告されています。

オランダのノールトブラバント州にあるミンク農場 ©BONT VOOR DIEREN

出典
https://www.bbc.com/news/science-environment-52535075
https://www.afpbb.com/articles/-/3301742
https://www.hln.be/wetenschap-planeet/dieren/nederlandse-nertsenhouders-moeten-begin-2021-de-deuren-sluiten~a748def6/

スペイン

2020年5月21日、北東部にあるアラゴン州内のミンク農場で従業員にCOVID-19が確認されました。そこで飼育されているミンクにPCR検査を実施したところ結果は陰性。しかし、その後も数回PCR検査を実施した結果、陽性数が増加していきました。7月17日時点で、92,700頭ものミンクが殺処分されています。

出典
https://www.sentinelassam.com/international/covid-spreads-to-another-denmark-mink-farm-484232

米国

2020年8月17日、米国農務省の国立獣医サービス研究所(NVSL)は、ユタ州内2か所の農場で、ミンクにCOVID-19が確認されたケースを発表しました。これは、米国初です。この2か所の農場は、ミンクと接触している人にもCOVID-19の陽性例が報告されています。(殺処分数についてはデータなし)
ユタ州には現在65か所のミンク農場があります。ウィスコンシン州に次いで、ユタ州は国内第2のミンク生産地です。米国では、国内23州にある約275か所のミンク農場で年間300万枚もの毛皮が生産され、それに30億ドルの価値が付きます。そしてその多くは中国へ輸出されています。しかし今年はCOVID-19感染拡大による渡航制限やロックダウンがあり、生産品を売ることが不可能になりました。

出典
https://www.aphis.usda.gov/aphis/ourfocus/animalhealth/sa_one_health/sars-cov-2-animals-us
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/daily-life-coping/animals.html


現在、ミンクをはじめ動物がCOVID-19を人間に広める主要経路になるという証拠はありません。また動物がウイルスの蔓延に関与するか否かも研究段階です。オランダではミンクから人に感染したと思われる報告が2例ほどあるだけで、人からミンクに感染した例がほとんどです。毛皮農場では動物を密に飼育しているため、人から動物にウイルスが感染すると、瞬く間に農場中に感染が広がるのは容易に想像できます。毛皮のためだけに飼育され殺される運命の動物たちが、感染症においても人間の犠牲になっています。この点においても、毛皮農場は一刻も早く、すべての国から廃止されるべきです。

※2020年9月9日時点の情報です。

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