トクホや機能性表示食品「動物実験は義務付けではなく、人において問題がないという根拠を示せればいい」―消費者庁が国会で答弁

2020年12月2日、参議院の地方創生及び消費者問題に関する特別委員会が開かれ、社民党の福島みずほ議員が質疑に立ち、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品のための動物実験について改めて「必須ではない」との政府見解を引き出してくれました!

福島みずほOFFICIAL SITE「2020年12月02日、地方・消費者問題に関する特別委にて、エシカル消費、ビジネスと人権、動物実験、香害について質問」

「食べるもののために動物実験!?」

皆さんは、私たちが口にする〈食品〉のために、動物が実験台にされ、苦しめられ、殺されるという事実をご存知ですか?
「美しさに犠牲はいらない」と化粧品のための動物実験に反対してくださる声と同じぐらい、あるいはそれ以上に、「食べ物のための動物実験」に対して、不快感や違和感、怒りや悲しみを覚える声がたくさん届いています。
JAVAでもこれまで、国内の食品メーカーに対して動物実験の廃止を求め、いくつかのメーカーから「廃止宣言」を勝ち取ってきました。
しかし、まだまだ多くの大手メーカーで動物実験が公然と行われています。

不自然な〈機能性〉のために動物が犠牲に

CMでもよく見かける「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」はいま、食品業界で最も開発が華やかな分野です。
いずれも「栄養機能表示」が許されている食品分類で、「トクホ」が消費者庁による許可が必要である一方、「機能性表示食品」は事業者の責任で国に届出を行い製造販売されます。
この食品の効き目(有効性/機能性)と安全性を明らかにするために、動物実験が行われることがあります。
いずれも、いままで多くの人に食べられてきたものやヒト試験でデータが得られているもので商品設計を行えば動物実験を行う必要はないのですが、食経験が少ないものやヒトでのデータがないなど新規性のあるものを使って商品を開発しようとすると、動物実験が必要とされてきました。
昨今、どこの企業も一様に謳っている「健康寿命の延伸」。本格的な少子高齢化社会を迎えようとするいま、食品業界では食べ物に不自然な〈機能性〉を添加して目新しい新商品を展開し利益を上げる、そのために、本来不要であるはずの動物実験が行われる、そんな構図が浮かび上がってきます。

動物実験は義務付けられているのか

今年7月「2021年12月末までに、食品・飲料分野における動物実験を全廃する」旨を明らかにしたアサヒグループホールディングスですが、JAVAが働きかけを始めた今年1月当初は、「法律で明確に義務付けられた動物実験は例外」としていました。それはどういうことかというと、新規性のあるものを使ってトクホや機能性表示食品を開発していく道を残そうとしていたからです(※その経緯はこちら)。
しかし、6月、JAVAが福島みずほ議員を介してトクホや機能性表示食品を所管する消費者庁に問い合わせると、「動物試験は必須ではない」ということが判明。消費者庁に申請や届出をするトクホや機能性表示食品の安全性や機能性について、科学的根拠がしっかりしていればよいわけで、その方法が動物実験である必要はない=動物実験は義務付けていないということが明らかになりました。これにより、「法的に義務付けられているから致し方ない」という前提条件が崩れ、翌月、アサヒグループはその部分も含めて2021年12月末までに全廃する決定を出したのです。
そして今回、福島議員がその内容を改めて国会の場で質問し、それに対して「必ずしも動物実験の実施を義務付けているわけではなく、人において問題がないと認められる根拠を示すことができれば、動物実験を実施せず、許可申請や届出を行うことは可能」「(国の審査の過程で追加の科学的根拠を求められることになった場合も)動物試験の実施を必須とするものではなく、科学的根拠として十分な内容があればいい」との答弁がなされ、政府見解として議事録に残ることとなりました。

消費者庁も「3Rの推進と徹底を進める努力をしていく」

「動物実験の3Rをもっと進めていくべきだ」と訴えた福島みずほ参議院議員

昨年改正された動物愛護法が今年の6月から施行されていますが、そのもとに策定される「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」のなかに、
「関係省庁、団体等と連携しながら、実験動物を取り扱う関係機関及び関係者に対し『3Rの原則』、実験動物の飼養保管等基準の周知の推進や遵守の徹底を進めるとともに、当該基準の遵守状況について、定期的な実態把握を行い、適切な方法により公表すること。」
という項目があります。
実際には、動物実験の基本指針をつくっている文科省、厚労省、農水省の3省しか関係省庁としての自覚がなく、その他の省庁は「関係ない」という認識なのです。でも、今回の質疑で、動物実験施設は有していないけれど動物実験が行われる可能性の高い承認申請業務のある消費者庁に対し「3Rをもっと進めていくべきだ」と訴え、井上信治内閣府特命担当大臣から「指摘を受け止めてしっかり努力してまいりたい」との答弁を引き出せたことも大きな一歩となりました。

「指摘を受け止めてしっかり努力してまいりたい」との答弁をした井上信治内閣府特命担当大臣

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