「施行規則」と「引取りの措置」のパブコメ結果–JAVAが求めてきた「死体の払い下げ」記述削除

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昨年12月26日にご意見を届けてくださるようお願いしました動物愛護法の「施行規則」と告示「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」(以下、「引取りの措置」)の改正案に対するパブリックコメントの結果を環境省が公表しました。

355名・団体から、延べ1,468件の意見があったとのことです。
皆様、ご協力をありがとうございました。

パブコメを受けて修正され、1月23日に中央環境審議会から答申がなされたものが以下になります。
2月末に改正後の省令や告示が公布される予定です。
「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行等の在り方について」に係る中央環境審議会答申について

実現した改正は21項目中3項目

JAVAと動物愛護法改正の活動を協働で行っているアニマルライツセンター、PEACEは、「施行規則」と「引取りの措置」で改正が必要と思われるところを網羅した21項目に及ぶ意見を環境省に提出していました。

今回、私たちの意見を反映した改正がなされたのは、わずか3項目でした。ただ、動物愛護法に限らず、パブリックコメントにかけられる段階でほぼ内容は確定しており、そこからの修正は容易ではなく、3団体は、私たちの意見が少しでも取り入れられるよう、ロビー活動も行うなど全力を投じて成し得た結果です。

≪JAVAが提出したパブコメはこちら↓≫

JAVAを含む3団体の意見が反映された箇所

(スマートフォンなどの携帯画面からご覧になる場合はこちらの表をご覧ください)

該当箇所 パブコメがかけられた素案 JAVAの意見 パブコメ後の答申案
施行規則
動物取扱責任者等に関する要件の追加

(2)動物取扱責任者研修について

(動物取扱責任者研修)

第十条

3 第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、第一種動物取扱業の業務の実施にあたり当該登録に係る都道府県知事が地域の実情に応じて効果的であると認める事項を内容とする動物取扱責任者研修を受けさせなければならない。(中略)

一~三 (削る)

(動物取扱責任者研修)

第十条

3 第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、第一種動物取扱業の業務の実施にあたり当該登録に係る都道府県知事が動物取扱責任者研修を次に定めるところにより受けさせなければならない。(中略)

一 一年に一回以上受けさせること。

二 一回当たり三時間以上受けさせること。

三 次に掲げる項目について受けさせること。

イ 動物の愛護及び管理に関する法令(条例を含む。)及び関連法令

ロ 飼養施設の管理に関する方法

ハ 動物の管理に関する方法

ニ 時事的課題若しくは地域の実情に応じて効果的であると認める事項

ホ イからハまでに掲げるもののほか、第一種動物取扱業の業務の実施に関すること。

(動物取扱責任者研修)

第十条

3 第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、当該登録に係る都道府県知事の開催する次に掲げる事項に関する動物取扱責任者研修を受けさせなければならない。(中略)

一 動物の愛護及び管理に関する法令(条例を含む。)

二 飼養施設の管理に関する方法

三 動物の管理に関する方法

四 前三号に掲げるもののほか、第一種動物取扱業の業務の実施に関し都道府県知事が地域の実情に応じて必要と認める事項

<パブコメ結果に対するJAVAの見解>

基本的に現行の規定を残すべきとの意見を出していた。実態として業者に自治体がアクセスできるのは、この動物取扱責任者研修だけである。問題業者への指導をこの研修で代えている事例もあり、研修内容は何でもよいというわけではない。法には、研修の内容は環境省令で定める旨が書かれており、省令で国が内容を指定しないのは無責任である。頻度についても規定を全面削除するというのは暴挙で、これでは5年に一度にしても問題がないことになってしまう。それでは、業者に第一種動物取扱業者としての自覚を持たせることが困難になる。頻度についての私たち3団体の意見は反映されなかったが、研修内容については、4点、戻すことができた。

犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について
所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合、犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の主要に関する措置

(2)犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について

第1 犬及び猫の引取り

3 都道府県知事等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがあると認められる場合又は動物の健康や安全を保持するために必要と認める場合は、引取りを行うこと。ただし、当該事項が生ずるおそれがないと認められる場合など引取りを求める相当の事由がないと認められる場合にあっては、この限りではない。

4 (略)

5 都道府県知事等は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により引き取った犬又は猫について、引取り又は拾得の日時及び場所、引取り事由並びに特徴(種類、大きさ、毛色、毛の長短、性別、推定年月齢、装着している首輪等の識別器具の種類及びそれに付されている情報等)を台帳に記入すること。この場合 において、所有者が判明していないときは、都道府県知事等は、拾得場所を管轄する市町村の長に対し、当該台 帳に記入した事項を通知するとともに、狂犬病予防法(昭和 25年法律第247号)第6条第8項の規定に準ずる措置を採るよう協力を求めること。ただし、他の法令に別段の定めがある場合を除き、明らかに所有者がいないと認められる場合等にあっては、この限りでない。

第1 犬及び猫の引取り

3 都道府県知事等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがあると認められる場合又は動物の健康や安全を保持するために必要と認める場合は、引取りを行うこと。ただし、当該事項が生ずるおそれがないと認められる場合など引取りを求める相当の事由がないと認められる場合にあっては、この限りではない。

引取りに当たっては、駆除目的で捕獲された猫の引取りは原則認められないこと、また、持ち込まれた犬又は猫に所有者・占有者がいる可能性もあることに十分に留意して対応すること。

4 (略)

5 都道府県知事等は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により引き取った犬又は猫について、引取り又は拾得の日時及び場所、引取り事由並びに特徴(種類、大きさ、毛色、毛の長短、性別、推定年月齢、装着している首輪等の識別器具の種類及びそれに付されている情報等)を台帳に記入すること。この場合 において、所有者が判明していないときは、都道府県知事等は、拾得場所を管轄する市町村の長に対し、当該台 帳に記入した事項を通知するとともに、狂犬病予防法(昭和 25年法律第247号)第6条第8項の規定に準ずる措置を採るよう協力を求めること。ただし、他の法令に別段の定めがある場合を除き、明らかに所有者がいないと認められる場合等にあっては、この限りでない。

第1 犬及び猫の引取り

3 都道府県知事等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがあると認められる場合又は動物の健康や安全を保持するために必要と認められる場合は、引取りを行うこと。ただし、当該事態が生ずるおそれがないと認められる場合など引取りを求める相当の事由がないと認められる場合にあっては、この限りでない。

4 (略)

5 都道府県知事等は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により引き取った犬又は猫について、引取り又は拾得の日時及び場所、引取り事由並びに特徴(種類、大きさ、毛色、毛の長短、性別、推定年月齢、装着している首輪等の識別器具の種類及びそれに付されている情報等)を台帳に記入すること。この場合 において、所有者が判明していないときは、所有者がいる可能性があることに十分留意して対応することとし、都道府県知事等は、拾得場所を管轄する市町村の長に対し、当該台 帳に記入した事項を通知するとともに、狂犬病予防法(昭和 25年法律第247号)第6条第8項の規定に準ずる措置を採るよう協力を求めること。ただし、他の法令に別段の定めがある場合を除き、明らかに所有者がいないと認められる場合等にあっては、この限りでない。

<パブコメ結果に対するJAVAの見解>

全国で、猫を疎ましく思っている市民が無差別に猫を捕獲檻などで捕獲し、処分目的で自治体に持ち込むといったことが未だ発生している。これは「捕獲檻で捕獲された猫への対応について(環境省事務連絡 平成27年6月17日付)」にも記されている通り、動物愛護法に反するだけでなく、猫については、所有者の有無の判断は非常に困難であることから、窃盗、占有離脱物横領の可能性すらある悪質な行為である。この不正な持込み・引取りをなくさなければ、いつまでたっても殺処分をなくすことができない。そのため、私たち3団体は自治体における引取りの際に、駆除目的の引取りをしないよう、また所有者がいる可能性に留意して慎重に行うようにする旨を盛り込むことを求めていた。それに対して環境省の改正案は、引き取ったあとの犬猫の扱いについて規定している第5項に「所有者がいる可能性があることに十分留意して対応すること」と盛り込んだ。これでは私たちが求める本来の効果は望めない。ただ、それであっても所有者がいる可能性について明記されたことにより、飼い主への返還に努めたり、殺処分に慎重になることは期待できると考える。

所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合、犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の主要に関する措置

(2)犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について

第5 死体の処理

動物の死体は、専用の処理施設を設けている場合には当該施設において、専用の処理施設が設けられていない場合には廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)の定めるところにより、処理すること。ただし、化製その他の経済的利用にしようとする者へ払い下げる場合は、この限りでない。

第5 死体の処理

動物の死体は、専用の処理施設を設けている場合には当該施設において、専用の処理施設が設けられていない場合には廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)の定めるところにより、処理すること。ただし、化製その他の経済的利用にしようとする者へ払い下げる場合は、この限りでない。

第5 死体の処理

動物の死体は、専用の処理施設を設けている場合には当該施設において処理し、専用の処理施設が設けられていない場合には廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号)の定めるところにより処理するなど適切な措置を講ずること。

<パブコメ結果に対するJAVAの見解>

下記参照。

JAVAの長年の活動成果
「死体の払い下げ」の一文が削除される!

日本では、長年にわたり、自治体の施設に収容された犬猫や殺処分したその死体を動物実験などの目的に払い下げを行ってきました。JAVAは、生体、死体を問わず、飼い主に見捨てられたり、殺処分されるといった本来あってはならない行為の上になりたっている、この払い下げに対して、1986年の設立当初より反対の立場をとり、その廃止を求めてきました。
生体の動物実験用払い下げは、平成17年度をもって全国で廃止となり、前回の動物愛護法改正の際、「引取りの措置」から、払い下げの根拠であった「動物を教育、試験研究若しくは生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する者への譲渡」の一文が削除されました。

一方、死体の払い下げについては、環境省が全国自治体における実施状況を把握できていないという理由で、前回改正では、死体の払い下げの根拠である「ただし、化製その他の経済的利用にしようとする者へ払い下げる場合は、この限りでない」の削除が見送られた経緯があります。そのため当時JAVAが、全国の都道府県・指定都市・中核市に対して調査を行ったところ、払い下げを行っているのは奈良県、鳥取県、横浜市の3自治体のみと判明しました。その後、平成25年11月までに鳥取県と横浜市は廃止をし、「伝統技術の保存のため」として三味線用に民間の業者に払い下げを行っていた奈良県も平成24年度以降、払い下げの実績はありません。つまり全都道府県、政令市、中核市において犬猫をはじめ収容した動物の死体の払い下げは行われていない、事実上、廃止と言える状況となりました。

もし伝統技術の保存等のために死体の払い下げが必要というならば、その払い下げ動物を提供している、動物の飼養を途中放棄する無責任な飼い主もまた必要ということになります。「死体だから」と払い下げて有効利用しようという考えは、放棄した飼い主の罪悪感を薄めることにもなります。これでは繰り返し持ち込むような常習者をなくすことができないばかりか、殺処分の減少や国民の動物愛護意識の向上を妨げてしまいます。行政や動物保護団体が引取りや殺処分を減少させようと懸命に取り組んでいるなか、無責任な飼い主の存在を維持させるような払い下げは断じて許されません。
生体・死体を問わず、そもそも、犬猫等の収容動物の払い下げには何ら義務はなく、払い下げ先との癒着など単なる悪習によるものであり、動物愛護行政の推進を阻害する行為に他なりません。今回の「ただし、化製その他の経済的利用にしようとする者へ払い下げる場合は、この限りでない。」の削除は、JAVAが熱望してきた改正なのです。

本当に一歩ずつではありますが、今回実現できなかった改正を次回は実現させるために、そして、まずは今後予定されている、「動物愛護管理基本指針」の改正や動物取扱業の飼養保管基準とマイクロチップの規定の策定に関して、少しでも動物にとってよいものとなるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。

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