JAVAが求める改正
JAVAたち3団体は、前回改正で実現できず、課題として残っている「附則」や「付帯決議」に盛り込まれている点の改正を重点的に求めています。
要望内容は、随時見直しを行い、より良いものにしていっています。
※解説は共通ウェブページに掲載しています。
JAVAの求める改正
(2024年8月修正)
【附則】:前回改正で、今後の検討事項として附則に盛り込まれている
【決議】:前回改正で、措置を講じるべき事項や検討課題として、衆参両院の付帯決議に盛り込まれている
【答弁】:前回改正時の環境委員会で国会答弁があった
Ⅰ. 動物愛護法から動物福祉法への転換
- 法の目的(第1条) の「国民の間に動物を愛護する気風を招来し」を「国民の間に動物福祉を守る倫理的責任を根付かせ」に変え、動物福祉の担保を追加する。
- 基本原則(第2条)に動物福祉の「5つの自由」を盛り込む。
- 基本原則(第2条)の「動物が命あるもの」を「動物が命あるもの、感覚があり苦痛を感じるもの」とする。
Ⅱ. 対象動物種・業種の拡大
- 動物取扱業の対象種(第10条)を現行の「哺乳類・鳥類・爬虫類」に「両生類」と「魚類」を加え、「すべての脊椎動物」とする。【附則】
- 罰則の対象となる愛護動物の対象種(第44条第4項)を「哺乳類・鳥類・爬虫類」に「両生類」と「魚類」を加え、「すべての脊椎動物」とする。【附則】
- 動物取扱業の対象業種(第10条)を「生きた脊椎動物を扱うすべての業」に拡大し、動物実験施設、実験動物販売業、畜産関係業、生餌業、輸送業者、補助犬取扱施設、動物を使用した動画配信を生業とする者等を含める。【附則】
- 繁殖制限(第37条)の対象種を「犬猫」から「すべての脊椎動物」とする。
Ⅲ. 産業動物に関する条項を新設
- 新設する条項に以下の項目を加え、③、④、⑤に違反した場合は罰則を適用できるようにする。
- ①動物福祉の「5つの自由」を満たす飼育への転換を図ることを義務付ける
- ②国際的な水準と最新の動向に配慮するものとする
- ③産業動物の屠畜、殺処分においては、必ず意識喪失させてから次に進まなくてはならない
- ④飼育密度を適正に保つものとし、最低限、他の動物や壁と接触せずに横臥できる面積を与える
- ⑤外科的切除や施術では麻酔及び鎮痛薬を使用するものとする
- WOAH(世界動物保健機関/旧OIE(国際獣疫事務局))の基準に準じて「産業動物の飼養及び保管に関する基準」(農林水産省のアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針と連携し、屠畜については別途定める)を改定し、遵守義務とする。【決議】
Ⅳ. 動物実験代替法の利用を義務化、3Rの徹底
- 「動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等」(第41条)第1項における動物実験の代替や実験動物数の削減を現行の「配慮」から「義務」とする。【附則】
- 国(関係省庁)に、代替法があるものについて、その利用の検討と推進をすることを義務付ける。
- 代替法の開発・評価・普及を国の責務とする。【附則】
Ⅴ. 動物の輸送に関する条項を新設
- 条項には以下の項目を盛り込む。
- ①動物の輸送時間は最小限に抑える
- ②苦痛や不快さの軽減に努める
- ③給水は動物が渇きを覚える時間以上絶ってはならず、輸送が12時間以上に及ぶ場合は給餌する
- ④動物の生理、生態等に適した温度、明るさ、換気、湿度、床材、空間を保たなくてはならない
- その他WOAH(世界動物保健機関)の動物福祉規約「海上輸送」「陸路輸送」「空路輸送」に準じ基準を策定し遵守義務とする。
- 輸送時の基準の遵守を動物取扱者の責務に含める。
Ⅵ. 動物を殺す場合の方法を改善
- 第40条を以下のように赤字部分を追加し、二重消し線部分を削除する改正をする。
- (動物を殺す場合の方法)
- 第40条 動物を殺さなければならない場合には、できる限り速やかに、かつ苦痛のない方法によってその動物
に苦痛を与えない方法によつての意識を失わせた上でしなければならない。
- 罠にかかった野生動物が長時間苦しんだあげくに死に至ったり、残虐な殺され方をされるなど不適切な扱いが散見されるため、1の対象は、人がなんらかの関わりを持ち、殺す場合のすべての動物であることを明確にする。
- 1の改正により、自治体による殺処分において哺乳類の炭酸ガス単体による殺処分は実質禁止にする。【国会答弁】
- 殺処分前から殺処分、そして殺処分後の死亡確認に至るまで、少しでも動物の苦痛をなくす改善をする規定を追加する。
殺処分は、それ自体が虐待であり最も福祉の下がる瞬間である。殺処分が決まった動物については、殺処分の前段階から不適切な輸送や拘束などの扱いを受ける可能性が高い。殺処分の方法自体も苦痛が少ない方法がわかっていないケースは多く、事前の意識喪失を義務にするとともに、行ってはならない方法を規定し遵守義務にする必要がある。さらに殺処分後に死亡確認を行わないことにより、生きた状態で廃棄物にされたり、長時間苦しむこともあるため、死亡の確認も義務化する必要がある。
Ⅶ. 罰則の明確化
- 暴力行為や酷使等について、衰弱や死亡に至ることを前提とせず、その行為そのものを禁じる。(第44条第2項)
- 罰則の条文に、虐待の定義として下記の①~⑮を明記し、虐待の判断をしやすくする。
- ①不必要な苦痛を与える
- ②身体的な苦痛を与える
- ③酷使したり、加重労働させる
- ④拘束する、狭いスペースに入れる、あるいは繋ぎ、適切な運動をさせない
- ⑤苦痛を与える輸送をする
- ⑥生命や健康に危険が及ぶ状態で車内に動物を放置する
- ⑦不適切な明るさのもとにおく
- ⑧過密状態で飼養する
- ⑨精神的苦痛を与える、ストレスを与え続ける
- ⑩習性や生態に反した飼養管理を行う
- ⑪習性に適した給餌、給水を怠る
- ⑫傷病の治療や疾病の予防を行わないなど、健康への配慮を怠る
- ⑬獣医師免許を持たない者が手術等の処置を行う
- ⑭動物を闘わせる
- ⑮その他、上記以外の積極的・意図的虐待、ネグレクトや未必の故意と考えられる行為
Ⅷ. 虐待された動物の保護
- 行政による虐待された動物の緊急一時保護を可能にする。
- 殺傷・虐待・不適切飼養・遺棄した者が二度と飼養できないようにする。
Ⅸ. [第一種・第二種動物取扱業の規制を強化①]移動展示・移動販売の禁止
次の①~⑤によって、移動展示・移動販売を実質禁止する。
- ①登録時及び更新時の立入検査の義務化【決議】
- ②イベント主催者名等の登録は不可とし、事業者ごとの登録の義務化
- ③固定の事業所住所以外の登録の禁止(イベント会場、駐車場、公園等での販売・展示の禁止)
- ④施設への導入後、取り扱う動物の検疫期間を2週間設ける
- ⑤要件を満たさなくなった場合(土地建物の権原を失う等)の自動的な登録の抹消
Ⅹ. [第一種・第二種動物取扱業の規制を強化②]自治体職員の“動物Gメン”化
- 第二種動物取扱業を登録制など規制強化するとともに、営利性を持つ場合は第一種とする。
- 次の①~⑦によって、虐待に対して、行政が迅速かつ着実に的確に手続を遂行する制度にする。
- ①虐待の通報を受けた後、できるだけ速やかに、遅くとも1週間以内の立入検査を義務付ける。(第24条の義務化)
- ②環境省の「動物虐待等に関する対応ガイドライン」を規則等に格上げし、チェックシート形式で点検し、1つでも該当すれば虐待と認定する。
- ③行政が第一種動物取扱業者及び第一種動物取扱業者だった者の違反を発見したときは、勧告しなければならないとし、また、その勧告に係る措置をとるべきことを命じなくてはならないとし、義務化する。(第23条・第24条の2)
- ◯勧告、命令をする期限を3か月以内から1か月以内に改正 すべての問題点の改善までが1か月。
- ◯すべて改善されていなければ次の措置命令、行政処分、または動物虐待による告発等に進まなくてはならない。
- ④命令に違反した場合等の登録取り消し等を「できる」から義務化にし、即時登録取り消し、もしくは3か月以内に営業停止を命じる。(第19条の義務化)
- ⑤勧告、命令、取消、営業停止の行政処分時に業者名の公表を義務化する。(現行法では勧告違反者の公表はできる。(第23条第3項))
- ⑥基準違反等に対し、期限内の勧告・命令を怠った場合、環境省による自治体への指示をできるようにする。
- ⑦動物愛護管理担当職員の要件を強化する。(第37条第3項)
XI. すべての動物の所有者または占有者の責務・禁止事項の強化
- 飼養動物のホワイトリスト制を導入し、飼育してよい動物を指定し、それ以外の動物を飼育不可とする。
- 「動物を譲渡す者は、譲受ける者が適正飼養できることを確認すること」と義務付ける。【決議】
- 動物の習性等に応じた適正な飼養保管方法の説明を行う「動物販売業者の責務」(第8条)の対象を、販売業者だけではなく動物を譲渡する者全般に拡大する。
XII. 不適切飼養の是正
- 動物の所有者または占有者の責務である適正飼養(第7条)を義務付ける。「当該基準によらなければならない」と改める。
- 不適切飼養への指導及び助言を削除し、勧告及びその勧告に係る措置命令を義務化し、「自治体職員の“動物Gメン”化」をここでも適用させる。(第25条)
- 自治体の収容状況を改善するため、都道府県知事等の収容施設に係る全国一律の技術的基準を定める(冷暖房・収容スペースの広さ・運動等)。【決議】
XIII.特定動物の規制強化
- 細目を守らず逸走、対人事故を起こした場合などに罰則を設ける
- 対人事故を起こした場合、緊急一時保護が必要な場合などに、都道府県知事が他の特定飼養施設に移送を命じることができるようにする
XIV.その他の改正
- 対象動物種・対象業種の拡大や、畜産動物と実験動物の不適切飼養に対する勧告を可能にするために不可欠であることから、第10条の次の除外規定を削除する。
- (哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節から第四節までにおいて同じ。)
- 飼い主に対し、飼養する動物が対人事故を起こした場合の都道府県知事への報告を義務化する。
- 天然記念物に指定された日本犬6種を8週齢規制の適用除外にしている附則を削除し、犬猫等販売業者が繁殖したすべての犬猫に8週齢規制を適用させる。
JAVAが特に力を入れたい改正
上記の求める改正のうち、JAVAが特に力を入れたいと考えているのが「対象動物種・業種の拡大」の1~3と「動物実験代替法の利用を義務化、3Rの徹底」です。どちらも附則に盛り込まれていることからも、前回改正で実現できなかった大きな課題と言えます。
「対象動物種・業種の拡大」の1~3が実現できれば、たとえば、今は野放しであるカエルや観賞魚の劣悪な展示販売にも規制をかけることができるようになります。また学校等におけるカエルの解剖の実施を抑止する効果が期待できます。そして、「動物実験代替法の利用を義務化、3Rの徹底」が実現すれば、代替法への移行が進み動物実験の削減に貢献することが期待されます。
「許可制」「免許制」ではなく、
「自治体職員の“動物Gメン”化」で悪質業者を減らす
上記の要望Ⅹの「自治体職員の“動物Gメン”化」について、「なんだろう?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
悪質な動物販売業者や動物園などの動物取扱業が後を絶たず、「もっと厳しい規制にするため、許可制や免許制に」といった声もあります。しかし、JAVAは「許可制」「免許制」には反対です。
動物愛護法に基づき、動物取扱業者に対して改善のための措置を講じるのは自治体です。しかし、その肝心の自治体が虐待の通報を受けても動きが鈍かったり、虐待現場をみても、「これは虐待ではない」と主張し、放置や適切な対応をとらないケースが発生しています。改善が必要な状態と判断しても、業者に対して指導を繰り返すだけで改善に至らないケースが多いのです。本来は指導ではなく、勧告及びその措置命令をすべきなのです。
このような状況で「許可制」や「免許制」にしても、単に制度名の変更になってしまい、悪質な業者にも許可や免許が与えられてしまうことが容易に想像できます。実際、届出制から今の登録制になった際もそうでした。つまり、改正によって、より規制が厳しくなっても、それを行使する自治体が適切な対応を取れなければ、動物たちの救済に繋がらないのです。
そのようなことから、着実に劣悪、悪質な業者を減らしていくため、上記の「自治体職員の“動物Gメン”化」のような改正をして、実効性のある制度にすることが最適と考えます。
私たちの求める改正の実現に向けて、次の改正も全力で取り組んで参りますので、ご協力をよろしくお願いいたします。