牛たちへの数々の虐待
牛たちへの虐待が暴露される
2023年7月、畜産センターの従業員たちによる牛への虐待の様子を撮影した動画が、PETA Asia(動物の倫理的な扱いを求める人々の会 アジア)によってインターネット上に公開され、その残酷行為が暴露されました(内部告発者が2022年に3カ月にわたって記録したもの)。
畜産センターの従業員たちによる牛への虐待は、ここにすべてを列挙し尽くせないほど非常に多く発生しています。下記はそのほんの一部です。
日常的に殴る、蹴るなどの暴力をふるう
牛たちは、複数の従業員たちから、こぶしで顔を殴られる、金属製の掃除道具で足を叩かれる、竹棒で乳房や腹を突かれる、足で下半身を蹴られるといった暴力を日常的に受けていた。時には1回の診察時に治療中の後ろ足を金属製のスコップで17回突かれたこともあった。
猛暑の中、日陰もない屋外運動場に放置する
気温が40度に達し、日よけのない運動場に出されている複数の牛が、口から泡を吹き、舌を出して荒い呼吸を繰り返しているにもかかわらず、牛舎に入れずに運動場に放置した。
雨を避けることもできない飼育場で飼育する
屋外の囲いで常時飼育されている牛たちがいる。そこには風雨や暑さや寒さから身を守ることのできる避難スペースはない。あるのは餌に雨がかからないようにするための小さな屋根のみ。そのため雨の強い日には牛たちはずぶ濡れになる。
映っている牛の名前は、「すずな」と「みかん」。「すずな」は2022年4月20日から6月8日まで、「みかん」も同時期に1か月半ほど昼夜とわずこの囲いに収容されていた。雨に濡れた体で気温7.4度の中過ごしたこともあった。その後、この2頭と入れ替わりで、5頭の牛たちがこの囲いに入れられた。
まともに体を横たえることもできない状態で飼育する
繋ぎ飼い方式の牛舎の牛たちは、横臥する際、後肢部分はグレーチング(金属製のスノコ)に横たえなければならない環境になっている。さらにそのグレーチングが劣化して曲がっていたり、グレーチングの数が足りず隙間ができていたりする場所があり、牛たちはまともに横たわることもできない。
麻酔や鎮静剤の投与をせずに、子牛の除角を行っている
子牛の除角を行う際、コンクリ―トの床の上に横倒しにし、両前足、両後ろ足をそれぞれロープでくくり、さらにくくられた前足と後ろ足をくくった。これで子牛は足の自由がきかなくなるが、さらにその子牛の上に従業員4名が乗った。別の従業員が痛みで泣き叫ぶ子牛の頭を足で押さえつけ、熱せられた焼きゴテを押し当てて、角の組織を取り除く。従業員らはこの作業を「残酷焼き」「焼き肉をやいているようなもん」と呼んでいた。
農林水産省の指針では、「除角を行う際、牛への過度なストレスを防止するため、獣医師等の指導の下、牛の種類と飼養方法にとって最適な、可能な限り苦痛を生じさせない時期と方法を選択する。また、必要に応じて獣医師による麻酔薬や鎮痛剤の投与の下で行う」と記されている。そもそも除角は必ずしも行わなければならないものではない。
乱暴な方法で胃液採取を行っている
この「ハーモニカ」という名の乳牛は、毎月1~2回行われる胃液採取に使われていた。
いつも胃液は簡単にはとれなかった。「ハーモニカ」は、連動スタンチョンに縛り付けられ、はじめは鼻から長いチューブを入れられたが、なかなか胃液を吸い上げることができず、何度もチューブを鼻から出し入れする作業が繰り返された。「ハーモニカ」は鼻孔から血を流し、口からはよだれをだらだらと垂らし、何度も暴れた。
右の鼻の穴からやってうまくいかず、次に左の穴からやってもうまくいかず、最終的にはプラスチックのパイプが用いられた。1人の従業員が抵抗して固く閉じている「ハーモニカ」の口を両手でこじ開け、もう1人が長い舌を引っ張り出してつかみ、プラスチックパイプを喉にねじ込んだ。今度はそのパイプを通して口からチューブを入れて胃液を採取しようとしたが、それもまたすぐには成功しなかった。
またも繰り返しチューブが出し入れされ、胃液を採取できるまで、「ハーモニカ」を拘束してから20~30分くらいかかった。 「ハーモニカ」は、このような苦痛を何度も味わわされ、2023年1月、3歳で死亡した。
足が埋まるほどドロドロになった運動場に閉じ込める
運動場(パドック)の糞尿を排出する作業を怠り、まったく行っていない。そのため、気温の低い時期には地面がドロドロにぬかるんだ状態となる。牛たちは毎日強制的にこの泥濘化した運動場に閉じ込められていた。
農水省は「不適切で改善が必要」
PETA Asiaから、畜産センターの実態の通報を受けた農林水産省は、下記の通知「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の徹底について」(4畜産第2932号 令和5年3月29日 農林水産省畜産局畜産振興課長から地方農政局生産部長等あて)を発出しています。
これは、都道府県等に各管内におけるアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を徹底するよう求めるもので、この通知から農水省も畜産センターで行われていることが不適切で改善が必要という認識であることがわかります。