そのほかのこと

さまざまなかたちで苦しむ動物たち

私たちの暮らしのかげで、さまざまな動物たちが人間から虐待を受け、苦しんだあげくに殺されています。
しかしその残酷な実態はほとんど知られていません。
犠牲になっている動物たちのその苦しみを、少しでも知ってください。
もし自分が同じ目にあったらと、想像してみてください。
そして、動物たちのために私たちができることを考えましょう。

食料品にされる動物たちのこと(畜産動物)

肉牛

多くの場合、2歳前後まで狭い牛舎の中で飼育される。麻酔もなしに角を切られ、さらにオスは麻酔なしに去勢される。飼料や投薬により人工的に肉質をコントロールされ、出荷時には立っているのが困難なほど肥えさせられる。やっと外に出られた時には、と畜場に運ばれていく時である。

肉豚

ブタはデリケートでストレスを感じやすい動物で、カニバリズム(共食い)を起こしやすい。巨大な畜産工場では、それを防ぐために子豚のうちに歯と尻尾を切り落とされ、生後6か月前後で肉にされる。母豚は3年間に6回ほど出産させられ、3〜4才で肉にされる。

肉鶏(ブロイラー)

2か月ほどの短い期間で成長するよう作られた大量飼育の食肉用鶏をブロイラーという。倉庫のような施設の中で超過密状態で飼育される。そのため、ニワトリたちは激しいストレスに苦しめられる。

乳牛

ウシは常に乳を出す動物なのではない。他の動物と同じで子育て中にしか乳は出ない。だから常に乳が出るように、人為的に妊娠させられているのだ。乳牛は、スタンチョンという留め具で首を固定されたり、チェーンで繋がれて飼われることが多く、自分の体の大きさほどのスペースで、立っているか寝そべるしかできない。約5年間搾乳された後は食肉にされる。

卵鶏(成鳥)

バタリーケージという羽を伸ばすこともできない狭いケージが、何段にも積み上げられた施設で飼育されるのが一般的(EUでは、動物福祉の観点から2012年1月全面禁止)。カニバリズム(共食い)の防止策としてヒナのうちに無麻酔で嘴が切り落とされる。ケージがワイヤーでできているため足がからまったり挟まって変形してしまうことが多いうえ、施設によっては仲間の死骸がいつまでも放置されているといったこともある。このような過酷な環境の中で1〜2年間卵を産み続ける。通常でも照明によって昼を長く夜を短くして産卵率をあげさせられているのだが、卵を産まない換羽期に入ると、給餌給水を絶たれ、強制的に換羽させられ、強引に産卵させるという方法が採られる。産卵率が落ちた鶏は殺される。

卵鶏(ヒヨコ)

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ヒヨコは生まれてすぐにオスメスの判別が行なわれる。卵を産まないオスは、ビニール袋に捨てられ窒息するか圧迫されて死んでいく。アメリカでは生きたままシュレッダーで粉砕していた孵化場の実態が暴露された。

フォアグラ(ガチョウやカモの肝臓)

金属パイプをガチョウやカモの口に差し込み、食道に強制的に餌を流し込み、約1か月で正常な肝臓を通常の10倍ほどにまで肥大させる。つまり、人工的に脂肪肝にさせるのだ。殺されたあと、取り出された病的な肝臓は「世界三大珍味」のひとつ、フォアグラとなって、グルメと呼ばれる人間の口に運ばれていく。

服飾品や生活用品にされる動物たちのこと(畜産動物)

ダウン(羽毛)やフェザー(羽)

ガチョウやアヒルといった水鳥から採取する。フォアグラ、肉、卵用の鳥から採取する場合と、羽毛用に繁殖飼育して採る場合がある。採取方法には、マシンピック(殺した鳥から機械で採取)、ハンドピック(殺した鳥から人がむしる)、ライブハンドピック(生きたまま人がむしる)がある。ライブハンドピックにより採取したダウンが高級品とされる。

ウール(羊毛)

メリノ種のヒツジは、より多くの毛を採るため、しわの多い皮膚にしてたくさん毛を生やすよう品種改良されてきた。そのしわにハエが卵を産みつけウジが繁殖し、ヒツジをさまざまな病気にしてしまう。それを防ぐため、「ミュールシング」と呼ばれる、麻酔もせずにハサミでヒツジのおしりの肉をばっさり切り取るという残酷なことが行われている。 「ミュールシング」を施したウールの不使用を宣言する、H&Mやヒューゴボスといったグローバル企業も増えてはいる。

皮革製品

ウシ、カーフスキン(生後6か月以内の子牛)、ウマ、ヒツジ、ブタ、オーストリッチ(ダチョウ)などの食用動物から副産物として利用することが圧倒的に多い。 革を採るために繁殖される動物や捕まえられる野生動物もいる。パイソン(ヘビ)、クロコダイル、ペッカリーなど。

ブラシや筆類

化粧ブラシにはヤギ、ウマ、リスなどの毛が、ヘアブラシにはブタ、イノシシの毛が使われる。習字の筆や絵筆の多くにも、ウマ、ヤギ、シカ、ブタ、タヌキ、イタチ、ウサギ、リスといった動物の毛が使用される。

野生動物たちのこと

有害鳥獣とされる動物

全国各地で、人や農産物などに被害を与えたり、与えるおそれがある「有害鳥獣」とされ、多くの野生動物が殺処分されている。天然記念物であっても駆除されている動物もいる。野生動物が人里に現れる原因は、人間が自然破壊を続けた結果、動物たちが以前のように十分な餌の確保ができなくなってしまったことに他ならない。 クマ、シカ、カモシカ、イノシシ、サル、カラスなど。

特定外来生物

人間によって海外から持ち込まれた生物のことを外来生物と言う。その中で在来の生物を補食したり、生態系に害を及ぼす可能性があると国が指定したのが「特定外来生物」である。指定された動物は根絶の事業の対象とされ、殺処分が推奨されてしまっている。 アライグマ、マングース、タイワンリス、ブラックバス、カミツキガメなど。

絶滅危惧種

人間によって、生息地の自然が壊されたり、商業利用のために乱獲されたりといった理由で、たくさんの動植物が絶滅の危機にさらされている。すでに絶滅した種も多い。日本では絶滅危惧種にあげられている動植物は3,732種に昇る(2019年1月環境省発表)。

利用される動物の一例
ゾウ→象牙/サイ→角(漢方・工芸品)/ウミガメ→ベッコウ/クマ→熊の胆/トラ→骨(漢方)・毛皮/ジャコウジカ→ムスクなど。

海洋生物

日本ではイルカの追い込み猟が和歌山県と静岡県で行われている。群れごと狭い入り江に追い込まれた後、捕獲され、食用にされるイルカは殺される。水族館のイルカは、この猟から生け捕りにされたものがほとんどだ。また、サメは中華料理の高級食材であるフカヒレのために捕獲される。船上に引き上げられ、背ビレ、腹ビレ、尾ビレなどを切り取られ、生きたまま海に投げ込まれるという残虐な漁が行われている。

見世物にされる動物たちのこと

動物園、水族館、観光牧場、サーカスなど

人間は、動物を見たり触ったりするのが好きだ。しかし人が訪れるレジャー施設にいる動物たちは、好き好んでそこにいるではない。生まれ故郷から無理やり捉えられ、放り込まれたことも多い。そして、彼らの生態に合わない生活や無理な動きを伴う芸を強いられ、幸福を追求することができない。動物園で見られる同じ動作の繰り返す動物は、精神が病気になっているからに他ならない。

競走馬

レースに出馬しているのは、ほんの一握りの馬たち。金儲けをしたい人間が強い馬を生産しようと、毎年約7千頭を繁殖させる裏で、たくさんの馬が不要とされ処分されている。最後は馬肉となって人の口に入ったり、家畜の飼料となる運命だ。

闘犬、闘鶏、闘牛

同じ種の動物同士を戦わせ、賭けをすることもある。大怪我や死に至らしめる危険があるのは言うまでもない。スペインの闘牛は複数の人間が1頭の牛をなぶり殺す。

伝統という行事の犠牲になる動物たちのこと

文化、祭事、伝統行事という名目で、動物を痛めつけたり殺してしまう行事は、日本のみならず世界中で少なくありません。国際社会が、動物への虐待や搾取を悔い改めていく流れの中、伝統文化も変わっていく必要があるのです。

長野県諏訪大社の蛙狩(かわずがり)

毎年元旦に行われる五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する神事。実態は冬眠中のカエルを川底から数匹掘り出し、頭を矢で射抜いて串刺しにして、神前に供えるという虐殺行為である。

三重県多度大社と猪名部神社の上げ馬神事

豊作を占う神事として毎年行われている。人を乗せた馬が2m余りの急な絶壁を一気に駆け登る。臆病な動物である馬は通常このような急斜面を登ることはできない。数年前までは興奮剤を注射され、さらに大勢の人々から殴り蹴られしてようやく駆け登っていた。登りきれず転げ落ちたり、骨折する馬も少なくなかった。動物愛護団体の抗議により、薬物使用は中止されたが、この神事自体が虐待であることは間違いない。

参考文献

  • 「地球動物園-豊かな暮らしに隠された悲しい事実と残酷秘話-」 平本メリエル著 自由国民社
  • 「いのちの食べかた」 森達也著 理論社
  • 「動物の権利」 ピーター・シンガー著 戸田清訳 岩波書店
  • 「動物の権利」 ピーター・シンガー著 戸田清訳 岩波書店

参考サイト

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