子連れの母グマ、射殺を逃れる!~福井県・越前市~
子連れの母グマ、射殺を逃れる!~福井県・越前市~
「絶対に殺さない」方針に転換させよう
4月18日、福井県越前市の山中で、2頭の子グマのいる母グマが女性に怪我を負わせる事故があり、母グマの射殺計画がたてられました。
越前市農林整備課によると、山菜取りをしていた女性が知らずにクマの巣穴に近づいてしまったため、母グマが女性に怪我を負わせてしまったとのことです。母グマは事故後、姿を消していましたが、市と県は、捕獲オリにかかる、もしくは、捜索している猟友会が発見すれば射殺する方針を打ち出しました。
JAVAは、即座に、越前市農林整備課と福井県自然保護課に状況の確認をすると共に射殺計画に抗議し、「決してクマを殺す方法を取らないこと」「再発防止策を緊急に講じること」を強く要望しました。
「クマを殺して解決する」は、あまりに短絡的
福井県は「福井県ツキノワグマ人身被害対応マニュアル」を作成し、この中に「クマによる人身被害が発生した場合、殺処分するものとする」といったことを規定しています。県も市も射殺計画を「このマニュアルにのっとった方針」と主張しました。
けれども、ツキノワグマをはじめ、野生動物に関しては、鳥獣保護法にのっとり、被害を防ぎながら共生していくことを目指して取り組んでいかなくてはなりません。自然破壊が進み、人とクマとの距離が狭まった今、この殺すことによる対策を続けていたら、いずれ絶滅させることにもなりかねないのです。
今回は特に、母グマは住宅地に現れたわけでも、人に近づいたわけでもなく、巣穴のすぐ近くに人が近づいてしまったため、子グマを守るためにとった当然の行動だったのです。
母グマ射殺を逃れ、親子は移動
事故翌日19日の捜索では母グマは発見されずにすみましたが、約1週間後に再度の捜索がされること、また捕獲オリは設置され続けていたため、射殺の心配が続きました。
そして、5月1日、やっとクマの親子は射殺を逃れて無事に移動し、捕獲オリも撤去されたことが確認できたのです。多数届いた「母グマを殺さないで」といった声が、捜索を早々に切り上げ、見守る方向へ導いたものと考えられます。実際、市の担当者からも「全国から多くの反響がある」といった発言がありました。
「殺す」ではなく、共存の道を 絶滅の危機が指摘されているにもかかわらず、毎年毎年、非常に多くのツキノワグマが殺され続けています。殺される理由のほとんどが「クマが人に怪我を負わせた」「クマが住宅地に現れた」などですが、そもそも山を荒廃させてクマの食べ物を奪った人間側に問題があるのです。そして、ゴミなどを放置して、人の住む所には食べ物があるという認識をクマに植え付けるなどして、クマが山からおりてくる原因を作っているのも人間です。殺すことは根本的な解決になりません。人身事故防止のためにも、クマの生息地を整備し守っていくなど、行政が全力を挙げて効果的な保護対策を早急に講じなければ、手遅れになってしまうのです。
(JAVA NEWS No.78より)