子供たちに動物実験をさせてはならない!
<教育プロジェクト>
子供たちに動物実験をさせてはならない!
小中学校の初等教育の場で、カエルやフナなどを使った解剖実習がいまだに行なわれています。義務付けではないにもかかわらず、教育者の「命を奪うことで命の大切さを教える」といった、誤った”生命軽視”の考え方によって、子供たちが実験をさせられるケースが後を絶ちません。使われる生き物、そして子供たちの心が犠牲になっています。
【1】「コガネムシに接着剤」etc…酷い昆虫実験
NHK教育テレビ番組「理科3年ふしぎだいすき」の中で、「コガネムシに接着剤をつける」という酷い実験が行なわれました。この実験は、生きたコガネムシに瞬間接着剤をつけて針金の先とくっつけ、針金のもう一方の先に丸めた粘土をくっつけて”やじろべえ”を作り、昆虫の飛ぶ様子を観察するというものでした。番組では、小学生に対してその実験に挑戦するよう勧めているのです。
この実験の問題点
この実験を紹介しているNHKの番組ホームページには、「接着剤が虫のはねやあしにはつかないように気をつけよう」と書かれています。しかし実際には、小さな虫の羽や足につかないように接着剤をつけることは容易ではなく、もしも、接着剤が虫の羽や足について飛べなくなるなどしたら、虫が犠牲になるだけでなく、自分の行為によって虫を傷つけたことに子供たちは大きなショックを受けるでしょう。
また、今回の実験は、「接着剤を生き物につけても構わない」と教えているに等しいと言えます。その結果、子供たちが、「飼っているハムスターに接着剤をつけたらどうなるだろう」「近所の野良猫につけてみよう」などと、身近な小動物で試してみようと考えたとしても不思議ではなく、小動物に対する虐待行為にエスカレートする危険性さえ孕んでいるのです。
問題を理解しないNHK
JAVAはNHKに対し、今後、昆虫をはじめ、”生き物”を不適切に扱う放送を決して行わないことや、ホームページなど、昆虫に接着剤をつける実験について記載された箇所を全て削除することなどを求めました。ところが、NHKは、接着剤の取り方等についての説明不足は認めましたが、「子供たちに生命の驚異とダイナミズムへの理解を深めてもらうというもの」「この実験方法は昆虫を傷つけたり殺したりするものではない」といった回答をしてきました。
NHKの回答は、今回の実験が虫を傷つけるか否か関係なく、生き物を工作道具のように扱っていること、そして、子供の生命倫理観の欠如など悪影響を及ぼすといった問題があるというJAVAの指摘を全く理解していない、あまりに意識の低いものでした。
また、実験を指導した多摩動物公園の昆虫専門家は、この他にも水の中で呼吸ができるようになっていない陸上に住む昆虫を水に落として、泳げるか溺れるかを観察する実験や、アリジゴクが餌である虫をどう捕らえるかを観察するため、人為的に巣穴に生きた虫を落とし食い殺されるのを見るという残酷な実験も紹介しているのです。
「虫ぐらいは・・・」という考えはおかしい
「子供が虫を傷つけたり、殺すぐらい仕方ない」と考える方もいるかもしれません。たしかに子供の成長期において、これらの実験のような行為を子供同士の遊びの中で行ってしまうことがあったでしょう。しかし、現在、生き物が景品にされたり、テレビゲームの中で殺しあいをするなど、生命に対する感覚が麻痺してきている状況において、生き物を苦しめ、死んでいく様子を「観察する」ことは(しかも、大人がそのような実験を勧めることは)、子供たちの生命倫理観の欠如を招く危険性が大いにあるのです。
何事にも好奇心を持ち、調べたり学んだりすることは重要ですが、それはあくまで、生き物を苦しめたり粗末に扱うなどの行為が無いことが大前提です。
「どんなに好奇心や興味があっても、やってならないことがある」という分別をつけさせることが、他者の痛みをわかる人格形成につながるとJAVAは考え、企画し指導している多摩動物公園の運営者である東京都知事対して、今後、”生き物”を不適切に扱う企画を決して行わないことなどの事項を強く要望しました。
【2】中学校でのマウスの解剖実習を阻止!
「理科の教諭がマウスの解剖実習をすると発言している。絶対やりたくない。解剖実習を絶対に行なわないよう、JAVAから学校に働きかけてほしい」と、ある中学校の生徒たちやその保護者たちから悲痛な訴えがありました。
中等教育における解剖実習については、教育課程の変更にともない、中学校の学習指導要領には「解剖」という言葉はなくなっています。このような改善がなされてきたのも、「生命尊重の観点からみると、生命をモノとして扱う解剖実習が、青少年にとって好ましくない」という認識が浸透してきた結果と言えます。
また、欧米では、大学の獣医学部や医学部においてさえ、「動物を殺す非人道的な教育を拒否する権利」を多くの学生たちが主張し始めた結果、動物実験を廃止して代替法を用いる学校が急増し、実際、アメリカでは大学医学部の80%以上が動物実験をしないで卒業できるようになっています。また、初等中等教育での解剖実習を法律で禁止している国もあるほどです。
JAVAは、その中学校校長に対し、命を犠牲にする教育の問題点を指摘し、解剖実習を行わないことを強く求めたところ、後日、事務局に「解剖実習は実施しない」旨の回答文書が届きました。
【3】メダカを使って洗剤の毒性実験
「大学が主催する子供を対象にした夏休みの体験学習で、メダカを使った洗剤の実験を行う」との情報をつかみました。
セミナーの内容
この体験学習は、「家庭で使用している洗剤をメダカやミジンコの入ったビーカーへ入れ、どの洗剤が環境に悪影響を与えるのかを確かめる」という内容で、岩手大学が参加者する子供の募集を行っていました。
環境問題の根本とは
地球規模で進行している環境汚染の現実を、洗剤という身近なものから子供たちに教えていくことは大切なことです。しかし、この環境問題に取り組む前提には、”地球上のあらゆる生命を尊重する心”が培われていることが不可欠です。人間以外の他の小さな生命に向けるやさしい心なくしては、環境問題の根本を捉えることはできないはずです。
ところが、岩手大学のセミナーは、その大切にすべき小さな命を殺すことから始めています。これは明らかに環境問題に取り組む趣旨から逸脱しているだけでなく、逆に、「メダカくらいなら、殺してもかまわない」と、小さな命を踏みにじることを子供たちに教えているも同然です。
子供の心へのダメージ
犬や猫だけでなく金魚やメダカを大切に飼っている子供も多く、そのようなやさしい心をもった子供たちに、メダカを殺す残酷な実験を見せつけることは、子供の心に深い傷を残します。またそれは、教育者・先生・大人に対する不信感につながる恐れもあり、登校拒否などの深刻な事態になることさえも懸念されます。現に、以前の実験においては、メダカが殺されていく様子を見せつけられ涙を流した子供がいたと大学側は話しています。
それにもかかわらず、子供の心を傷つけたことへの何の反省もなく、「最小の犠牲はしかたない」と言い放ち、その後も同じ内容のセミナーを行い続けるとは、言語道断です。国立大学としてあるまじきその教育方法に、JAVAは強い抗議を行いました。
(JAVA NEWS No.78より)