国内化粧品大手メーカー各社に公開質問状を送りました
2010年3月から動物実験の廃止に向けて動きを見せ始めた資生堂。
(※2013年3月をもって化粧品・医薬部外品の動物実験を廃止)
この動きを同業他社はどのように受け止めているのでしょうか?
2010年10月下旬、資生堂以外の化粧品大手各社に対して公開質問状を送付しました。
大手各社の回答
各社共通の言い訳
残念ながら「動物実験を廃止した」というメーカーはありませんでした。それどころか動物実験廃止にはほど遠い、後ろ向きな言い訳ばかりが並びました。
「安全性を最優先」
消費者に提供する製品の安全性を確保することは企業として当然のこと。でも「動物実験をやめること」=「安全性をないがしろにすること」ではありません。新たに動物実験をしなければならないような危険性のある化学物質を使わなければよいのです。
「動物愛護の精神は理解」
傷つけられ、苦しめられ、殺されていく「動物実験」とは「動物愛護」の対極にあるものです。本当に動物愛護の精神を理解している企業なら、すぐにでも動物実験を廃止できるはず。
「代替法が確立していない」
国際的にもその確立に大きな期待が寄せられている代替法ですが、残念ながら現段階(2011.5)では、すべての試験分野で確立されていません。しかしそれが動物実験をやめられない理由にはなりません。動物実験を廃止したうえで代替法の開発に尽力し、自らそれを確立させること。これが大手企業の責務です。
「必要最低限」
この言葉には注意が必要です。「最低限」と聞くと極めて数が少ないという印象を抱きがちですが「ゼロ」ではありません。しかも本当の数も公表されていません。10匹なのか100匹なのか1000匹なのか・・・?言葉のトリックにごまかされないで。
「法規制で求められる」
日本の薬事法は、化粧品について動物実験を義務づけていません。薬用化粧品などの医薬部外品については過去使われたことのない新たな原料を開発して配合しようという場合等に動物実験のデータを要求しています。「新規原料開発」は法律で求められているわけではありません!
なお、カネボウ、日本メナード、ノエビア、ポーラ、ライオンの非常に似通った回答をご覧ください。会社間で共有でもされているのでしょうか、定型的な文章をわずかにアレンジしただけのひどい代物です。所定の用紙での回答をしないばかりか、すでに用意された文章を流しておけばよいという、消費者に対して不誠実極まりない態度は、動物実験している/していない以前の問題です。(これらの企業名の横には🆖マークをつけてあります。)
「動物実験廃止は他人事」の各社にあなたの声を!
各社並列の回答を見ていると、絶望的な気持ちになるかもしれません。また、このような同業他社の消極姿勢は、せっかく前を向き始めた資生堂をも巻き込んで、日本の動物実験廃止への道筋を断ってしまうのではないか・・・との不安すら覚えます。
しかし、資生堂の実験廃止への歩み出しが、消費者の声の高まりを反映しているというのは紛れもない事実。私たちが次にすべきことは、資生堂の動きをチェックしつつ、他人顔の同業他社に対し働きかけを一層強め、「『動物実験廃止』は日本の化粧品業界全体の問題なのだ」ということを認識させることです。
資生堂を動かしたときよりもさらに大きな声、大きなアクションをお願いします!
花王
日用品では国内首位、化粧品ではソフィーナを中心にブランド展開、2006年に100%子会社化したカネボウ化粧品を含めると、国内では資生堂についで2位を占めます。
「全ての安全性評価の項目について、動物実験代替法が現時点では開発されるに至っておりません」などという言い訳は業界第2位の企業として言語道断。動物実験をやめたうえで、そこに割いてきた人材や費用のすべてを代替法開発に投入し、一日も早く代替法を確立させるべきです。
2009年秋発がん性物質に変化する恐れのある成分が含まれていたとして特定保健用食品「エコナ クッキングオイル」を自主回収したあと、ヒトの1日の想定摂取量の4600倍もの成分をラットに投与するという乱暴で無駄な実験を行ったことが記憶に新しい花王。(2010年8月26日厚生労働省発表)。「自然と調和する こころ豊かな毎日をめざして」と方針を掲げる大企業として、動物に対する態度を今一度根本から見直すべきです。
花王に声を届けよう!
- 〒103-8210 東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
- 花王株式会社
- 代表取締役 社長執行役員 澤田道隆
- TEL(月~金9:00~17:00)
- 0210-165-692(スキンケア・ヘアケア用品)
- 0120-165-696(入浴剤・ハミガキ・洗口剤・ハブラシ)
- 0120-165-693(洗濯・掃除・食器洗い用品)
- 0120-165-691(化粧品(ソフィーナ、エスト))
- 0120-165-699(ニベア花王、8×4)
- https://ssl.kao.com/jp/soudan/
カネボウ化粧品🆖
2004年巨額の粉飾決算が明らかになったのち、化粧品事業が花王に引き継がれ2006年から同社の100%子会社となったカネボウ化粧品。現在ではコフレドールやブランシール(一部医薬部外品)などのブランドラインを展開しています。
同社の回答は、典型的な言い訳を並べ立てただけの、極めて薄っぺらいものであると言わざるを得ません。「現状では、確固たる動物実験代替法は、一部しか確立されておらず、動物実験を全廃することは極めて困難な状況にあります」とありますが、「動物実験」という前提から脱却できないから代替法の確立が遅れてきたのです。動物実験が制限されれば、新規原料開発のために代替法を確立させようと企業のモチベーションが向上するのは当然のこと。自ら動物実験という古い選択肢にしがみつくのをやめ、代替法開発とその確立に向けて業界全体の力を結集させていくことが、大手メーカーの使命ではないでしょうか。
カネボウに声を届けよう!
- 〒103-8210 東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
- 株式会社カネボウ化粧品
- 代表取締役 社長執行役員 夏坂真澄
- TEL:0120-518-520
- https://ssl.kao.com/jp/kanebo-soudan/
コーセー
1946年の創業から55年を迎えるコーセー。国内では現在資生堂、カネボウに続く3位につけていますが、早くから進出した香港、韓国、中国などアジア市場でも確固たる地位を築いています。「美しい知恵 人へ、地球へ。」とのコーポレートメッセージを掲げる一方、動物実験に対するスタンスはどうでしょうか。
「化粧品に対する動物試験は実施しておりません」とありますが、美白成分等が含まれる「薬用化粧品」は「医薬部外品」に分類されるため、その開発を行っている限り、動物実験を実施していないとは言いきれません。非常に紛らわしい回答です。「近い将来には動物試験を廃止したい(後略)」という言葉だけならだれでも口にすることはできます。「近い将来」が1年後なのか5年後なのか10年後なのかわかりません。その思いが本気なら、知恵を出し、具体的に目標を決めて実現させるべきです。一刻も早くこの決断をくだすよう促しましょう。
コーセーに声を届けよう!
- 〒103-8251 東京都中央区日本橋3-6-2
- 株式会社コーセー
- 代表取締役社長 小林一俊
- TEL
- 0120-526-311(コーセー)
- 0120-763-326(ボーテド コーセー)
- 0120-763-327(プレディア)
- 0120-763-238(コーセーコスメニエンス)
- 0120-763-325(コスメデコルテ)
- 0120-586-683(アディクション)
- 0120-586-682(アウェイク)
- 0120-526-312(潤肌粋、雪肌粋)
- 0120-878-615(ポール スチュアート)
- 03-3277-8553(アディダス スキンプロテクション)
- https://www.kose.co.jp/jp/ja/products/inquiry/
サンスター
日本で初めてチューブ入りの練歯ミガキを発売したというサンスター。オーラルケア業界最大手ですが、ヘアケア・スキンケアのほか接着剤やシーリング材などの産業用資材も製造販売しています。
動物実験は代替されるべきだという考え方は、化粧品に限った話ではありません。EUのREACH規制では「物質の有害性評価のための動物実験代替法の促進」が目的の上位に掲げられ、この考えがさまざまな分野で世界標準になりつつあることは、接着剤やシーリング剤など化学用品を製造販売するサンスターならとうに理解していてしかるべき。いまだに「化粧品への動物実験の必要性を議論する上で(後略)」と、当事者意識の欠けたのんきな対応にはあきれるばかりです。
サンスターに声を届けよう!
- 〒569-1195 大阪府高槻市朝日町3-1
- サンスター株式会社
- 代表取締役社長 吉岡貴司
- TEL: 0120-008-241
- http://jp.sunstar.com
日本メナード化粧品🆖
本社を名古屋に置くメナードは、「メナードレディ」による訪問販売、販売代行の「メナードフェイシャルサロン」の展開を主な販売形態としています。ヘアカラーの株式会社ダリヤは創業者を同じくする関係会社。「美しさにまごころこめて」を企業理念とするメナードの動物実験ポリシーは・・・
こちらもカネボウ同様、定型文章という消費者を見くびった回答。「医薬部外品開発の一部につきましては(略)動物実験を全廃するには至っていないのが現状」とありますが、医薬部外品でも、新規原料を含まなければ動物実験の必要はありません。「薬事申請資料の代替法試験への移行が認められた時点で」と他人事のようにただ眺めて待つのではなく、一刻も早く移行を認めさせるよう、企業として積極的に厚生労働省に働きかけるべきです。
メナードに声を届けよう!
- 〒460-8567 名古屋市中区丸の内3-18-15
- 日本メナード化粧品株式会社
- 代表取締役社長 野々川 純一
- TEL:0120-164601
- https://corp.menard.co.jp/cgi-bin/contact/index.cgi
ノエビア🆖
デパートなどに化粧品カウンターを置かず、通信販売、訪問販売、直営店および販売代理店を中心に展開するノエビア。「植物のめぐみを活かした独自の自然派化粧品」と”自然派”を売りにするも、動物実験についてはどうでしょうか。
その回答はカネボウ同様、定型文章を用いただけの、消費者を軽んじたものでした。公式サイトでは堂々と「お客様とのコミュニケーションを大切にします」「お客様は貴重な助言者であることを絶えず意識し、皆さまにご満足いただけるよう誠実な対応に務めています」と書かれていますが、動物実験についての質問は適当にあしらうような企業には誠実さのかけらも感じられません。
ノエビアに声を届けよう!
- 〒650-8521 兵庫県神戸市中央区港島中町6-13-1(神戸本社)
- 〒104-8208 東京都中央区銀座7-6-15(東京本社)
- 株式会社ノエビア
- 代表取締役社長 海田安夫
- TEL:0120-401-001
- https://www.noevir.co.jp/new/custom/shouhin.htm
P&Gジャパン
世界最大の日用品メーカーP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、アリエール、ファブリーズ、ジョイ、パンパースなど日用品のほか、化粧品のマックスファクター、ポテトチップス「プリングルズ」、ペットフード「アイムス」「ユカヌバ」なども取り扱っています。世界最大の動物保護団体PETAには、しばしばその残酷な動物実験に対する抗議運動の標的にされています。
(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社はP&Gマックスファクター合同会社)
「動物実験を廃止・代替法に置き換えていく方針を掲げており(後略)」とありますが、最後には「真剣にその動物実験削減に取り組んでいる」と有ります。目標はあくまで「廃止」であることを常に明確にするべきです。さらにその姿勢に自負があるのならなおのこと、日本法人としてどの程度代替法開発に資金投入を行っているのかを明らかにし、すぐにでも日本語の資料公開をするべきです。それができなければ、これらの方針は単なる本国の受け売り、絵にかいた餅だととられても仕方ありません。
P&Gに声を届けよう!
- 〒658-0032 神戸市東灘区向洋町中1-17
- プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社
- 代表取締役社長 奥山真司
- TEL: 0120-021321(食器用洗剤等)
- 0120-021327(ヘアケア製品)
- 0120-021325(SK-II・マックス ファクター・イリューム)
富士フイルムヘルスケアラボラトリー
化粧品製造販売に参入したばかり富士フイルム。中島みゆきと松田聖子のCMで話題を呼んだ看板商品アスタリフトは、フイルム会社ならではのナノテクノロジー技術を用いたエイジング化粧品として鳴り物入りで登場しました。
🔸2011年11月10日付、富士フイルムヘルスケアラボラトリーの回答
「2008年度以降、化粧品製品での動物実験を廃止」とはつまり、2007年度まで化粧品の完成品でも動物実験を行っていたということ。2004年からEUで化粧品の完成品での動物実験が禁止されるなど脱・動物実験へ向かう世の趨勢を理解していなかったのは余りにも不見識、世間知らずとしか言いようがありません。自社の研究所は持たない同社が「代替法の検討を進める」というだけでは動物実験の廃止は不可能です。動物実験が必要なものは開発しないこと。どうしても新規原料を使いたければ、代替法研究開発に貢献し、確立させてからにすることです。
富士フイルムに声を届けよう!
- 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
- 株式会社富士フイルムヘルスケアラボラトリー
- 代表者 山下洋二郎
- TEL: 0120-686-225(お客様相談窓口)
- 0120-596-221(スキンケア商品について)
- https://shop-healthcare.fujifilm.jp/shop/contact/
ポーラ🆖
あまり知られていませんが、同じグループには、消費者に対し「動物実験していない」と答えているナチュラルイメージが売りのオルビス、「動物実験をしない」と謳っているオーガニックコスメ「THREE」(㈱ACRO)があるポーラ。その回答は…
「個々のご質問に関しましては一概にお答えしかねるものがあり、また表現によっては誤解を招く恐れがありますので」と添え状に断り書きがあるも、その回答たるやカネボウ同様定型文章で「共通の言い訳」のオンパレード。「動物実験が全廃できる日を目指す」という真剣さは微塵も伝わってきません。
オルビスにしろTHREEにしろ、同じグループだと知らずにこれらのブランドの製品を買うことは間接的に動物実験を支持することにつながりますのでくれぐれも注意してください。そもそも、抱えている個別のブランドに「動物実験していない」と謳わせていること自体、「動物実験していない」ことがセールスポイントだとわかっている証拠。それならばポーラ自体が動物実験をやめるべきです。
ポーラに声を届けよう!
- 〒141-8523 東京都品川区西五反田2-2-3
- 株式会社ポーラ
- 代表取締役社長 鈴木弘樹
- TEL: 0120-117-111
- https://net.pola.co.jp/ec/guestInquiryEdit.html?qIds=onlinestore
マンダム
大阪本拠のマンダムが他社から抜きん出ているのは、2007年から「日本動物実験代替法学会」を通じて代替法研究に年間250万円の助成金を拠出していること。代替法の開発過程ではその精度を比較検討するために新たに動物実験を行う場合がありますが、「助成金にて動物実験を一切行わない」という選考基準を設けていることは注目に値します。
しかしながら回答では「廃止に向けて検討中」としているものの、「同業他社などと協力しながら(略)取り組んでいます」というように他社への配慮を前面に出していること、資生堂の取組みについても「『2013年に動物実験の全面廃止を目指す』ことについては(略)変動の可能性を含んだものとして理解」など独自にネガティブな解釈をしていることを考えると、以前よりも動物実験廃止に及び腰になっているように感じざるを得ません。動物実験を廃止するかどうかの決断に横並び意識はいりません。一日も早い決断に向けて消費者からの強い後押しが必要です。
マンダムに声を届けよう!
- 〒540-8530 大阪市中央区十二軒町5-12
- 株式会社マンダム
- 代表取締役 社長執行役員 西村元延
- TEL: 0120-37-3337
- http://www.mandom.co.jp/customer/
ライオン🆖
いわゆる化粧品は取り扱っていないものの、オーラルケアを中心にトイレタリー製品、洗剤、機能性食品、薬品、殺虫剤などの化学品、工業用製品に至るまで幅広い分野を取り扱っているライオン。動物を社名に据えるライオンの、動物実験に対する姿勢は・・・
こちらもカネボウ同様、定型回答を送ってきました。「人への安全性を担保できないと判断せざるを得ない場合(略)必要最小限のレベルで動物実験を行っている」とありますが、そもそも安全性を担保できないようなものをわざわざ動物実験してまで商品化する必要があるのでしょうか?ライオンのいう「人に優しい製品」とは一体どんなものでしょう?聞こえのいい言葉を弄するだけで「動物実験という残酷さのない、動物にも優しいものを開発してほしい」という消費者の願いを完全に見誤っています。幅広い商品分野を手掛ける企業だからこそ、知識を結集してできるところからすぐにでも動物実験をやめていくべきです。
ライオンに声を届けよう!
- 〒130-8644 東京都墨田区本所1-3-7
- ライオン株式会社
- 代表取締役社長 濱 逸夫
- TEL:0120-556-913
- https://www.lion.co.jp/ja/support/