【動物愛護法改正】動物取扱業のパブコメは12万件以上!
【動物愛護法改正】
提出された意見は、12万件以上!
動物取扱業に関するパブコメ募集が行われました
「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護法)の改正のための審議が、環境省のもとに設置された「動物愛護管理のあり方検討小委員会」(以下、小委員会)において進められており、JAVAも環境省への要望や国会議員への働きかけを行っているところです。 7月には、ペットショップなど動物取扱業に関する小委員会での議論がまとめられた「動物取扱業の適正化について(案)」に対してパブリックコメント(国民の意見。以下、パブコメ)の募集が行われました。
パブコメ募集は、7月28日~8月27日の1ヶ月間行われ、環境省の発表によると、12万件以上の意見が届けられたとのことで、動物愛護法改正への世間の関心の高さが伺えます。ここでは、JAVAの出した意見の主な内容をご報告いたします。
※JAVAの意見全文はコチラ→「動物取扱業の適正化について(案)」に関する意見(PDFファイル)
販売・展示方法など生体の扱いの規制を強化
JAVAは、生体をショーウィンドウ等で店頭展示することそのものに反対であり、店頭展示を禁じることが最も望ましいと考えます。店頭展示禁止が今改正でできないとするならば、動物の生態・生理、健康や安全、ストレス等の問題を考え、最低でも次のような販売方法や生体の扱いは禁止もしくは制限を設けるべきであるとの意見を提出しました。
■ 深夜は当然のこと、18時以降の展示・販売は禁止すべきである。
■ 営業時間は1日8時間以内とし、途中に動物種や年齢等を考慮した適切な休憩時間を設けることも義務付けるべきである。
■ 移動販売は禁止すべきである。
■ イベント会場等を回って動物を展示する「移動展示」も禁止すべきである。
■ 対面販売・対面説明・購入者の生体の確認を義務付け、インターネット販売、インターネットオークションは禁止すべきである。
■ 犬猫オークション市場(せり市)は禁止すべきである。
■ 8週齢以下の犬猫を親や兄弟姉妹等から引き離すことは禁止すべきである。
■ 繁殖制限措置を設け、「年2回以上の出産をさせること」「生後2歳以下、8歳以上の犬猫に出産をさせること」の二点を禁止すべきである(この二点の禁止を盛り込むことで、生涯における出産回数も最大5回となる)。
■ 飼養施設については、現状より詳細で具体的な規制を導入し、行政官の権限を強化して劣悪飼育を迅速かつ効果的に指導するなどの措置をとれるようにする必要がある。ただ、動物種や個体によって、適切な環境や広さに差があり、一律の数値規制を設けることは難しい。その動物が快適に過ごせるような判断をケースバイケースでできるような基準とすべきである。
悪質な業者の排除促進のため、登録制度を強化
現行法は、「動物取扱業」を始める前に、事業所のある都道府県知事または政令市の長の登録を受けること、そして5年ごとの更新が義務付けられています。登録申請内容には、飼養施設の所在地、構造や規模、主として取り扱う動物の種類と数なども含まれています。行政はたとえば劣悪飼育をしているペットショップやブリーダーについて通報を受けた場合、現場に立ち入り、動物愛護法や条例に基づく基準への違反が確認されたら改善勧告を行います。この勧告の実施命令に違反した場合、登録取消し処分や6ヶ月以内の業務停止命令を下すこともできます。
しかし、劣悪飼育をする業者は後を絶たず、また、次の④にも記したように業者が所有する動物の問題があり、行政はなかなか厳しい処分や命令を下せないのが現状です。
さらに、現行法ではたとえ登録を取り消されても、家族の名前で再登録できてしまったり、種の保存法や鳥獣保護法など他の動物に関係する法令に違反し、有罪となっても営業を続けることができてしまうといった欠点があります。
そのようなことから、JAVAでは以下のように規制強化や改正をすべきであるとの意見を出しました。
①登録制から許可制へ
現場の行政担当者からも「規制により商売をやりづらくさせ、悪質業者を淘汰していくしかない」「悪質業者を出さない予防として、許可制など基準をあげるのもひとつ」といった声を耳にしています。現行法より厳しい規制とするため、登録制を許可制(1年ごとの更新)とすべきです。
②処分の対象者(範囲)を拡大
オランウータン等を密輸し、種の保存法違反で経営者が有罪となっても、営業を続けているペットショップなどの例があります。現在の登録制を許可制へ強化したうえで、営業許可を与えない、期間を限定しない業務停止命令や許可永久剥奪(廃業)の措置を、違反した当人だけでなく、その法人全体や家族等その関係者にも適用する規定も必要です。
③他の動物取扱いに関連する法令違反も適用
動物愛護法以外の動物取扱いに関連する法令(例:種の保存法、鳥獣保護法など)に違反した際にも、現在の登録制を許可制へ強化したうえで、営業許可を与えない、期間を限定しない業務停止命令や許可永久剥奪(廃業)の措置を講じることができるようにすべきです。なお、動物取扱いに関連する法令は、国内法だけでなく、海外での法律も対象にすることを求めます。
④業者所有の動物の緊急保護を可能に
現在、登録取消措置のネックとなっているのが、処分を受けた業者が所有している動物の世話の問題であるため、現在の登録制を許可制へ強化したうえで、期間を限定しない業務停止命令や許可永久剥奪(廃業)の処分を受けた業者の動物を、行政が緊急保護できるような規定も同時に設ける必要があります。
「両生類と魚類も」対象動物種を拡大
動物取扱業の規定の対象動物種は、現行法では、哺乳類、鳥類、爬虫類となっています。しかし、両生類と魚類はペットショップで扱われている例も多く、また、劣悪飼育や遺棄の問題も多数発生しています。そのため、両生類と魚類も加え、「すべての脊椎動物」とすべきです。
動物取扱業の業種を追加
現行法で「動物取扱業」と規定されているのは、「販売(ペットショップ、ブリーダーなど)」「保管(ペットホテルなど)」「貸出し(動物タレント派遣業など)」「訓練(ドッグトレーナーなど)」「展示(動物園など)」です。それ以外の業種は対象外なのです。しかし、生きた動物を扱うことを「業」としている以上、「動物取扱業」とし、規制の対象とすることは当然であるとJAVAは意見を出しました。
そして、環境省の「動物取扱業の適正化について(案)」に挙がっていた「両生類・魚類販売業者」「老犬・老猫ホーム」「教育・公的目的の団体」についても次のとおり規制すべきであるとの意見を述べました。
① 両生類・魚類販売業者
ペットショップで扱われている例が多いことから、両生類と魚類の販売業者も動物取扱業の対象とし、規制することは当然と考えます。金魚すくいや金魚品評会などの業態保護を考え、動物の福祉をないがしろにするべきではありません。
魚の酷い販売方法、ゲーム機の景品にされているといった劣悪な扱い、野外への遺棄が多いといった例を挙げ、小委員会の委員からも規制を求める意見が出されていました。 種の保存法は両生類も魚類も対象にしていることを考えても、動物愛護法においても、両生類と魚類を対象にすることは何ら問題ないと言えます。
② 老犬・老猫ホーム
「老犬・老猫ホーム」とは所有権を業者に移して、長期的な世話を有償で行う業種です。「保管」とは異なり、所有権が業者にあるため、これまでは動物取扱業の対象外でした。しかし、小委員会でも引き取った動物を放置し、世話をしない事例が挙げられており、またJAVAにも同様のケースの通報がありました。よって、「老犬・老猫ホーム」も規制対象とすべきです。ただ、対象動物種については犬猫以外でも問題が発生しているため、動物種は広げる必要があると考えます。
③ 教育・公益目的の団体
休日に給餌給水を行わない、風雨や暑さ・寒さの防げない環境下に置く、病気や怪我をしても治療を受けさせないなど、学校や幼稚園等で飼育されている動物の劣悪飼育の問題は各地で起こっており、JAVAにも多くの通報が寄せられています。
どんな生き物を飼育するにも、費用や手間が必要であるにも拘わらず、十分な予算を確保していない学校が多いうえに、そもそも児童・生徒の指導で手一杯の教師に動物の世話までさせることは不可能です。仮に獣医師や専門飼養者がいたとしても、子供たちに頻繁に触られる幼稚園や学校といった教育の場で動物を適切に飼育することは無理があり、原則、禁止にすべきです。
また、専門学校で飼育される動物は、学生の実験・実習に利用されるケースも多く、つまり、専門学校としての業に利用されており、動物取扱業の対象とし規制することは当然と考えます。
その他、警察犬や盲導犬といった使役動物の訓練・飼養施設も、営利目的でないにしろ、社会性のある反復した業務として行っている以上、一定の規制を設けるべきです。
実験動物も対象にするのは当然
現行法では、畜産動物や実験動物を扱う業は対象外となっています。つまり、食用や毛皮用の動物繁殖業者、実験動物繁殖業者、動物実験施設も対象外になっているのです。しかし、これらの業者も生きた動物を扱う業を営む者であり、対象にして当然です。
ところが、小委員会では追加業種の検討課題にすら挙がらず、当然、「動物取扱業の適正化について(案)」にも記されていなかったのです。
そのため、JAVAでは、畜産動物や実験動物を扱う業をはじめ、生きた動物を扱っている業者は全て対象にすべきであると意見をしました。
たとえば、動物実験施設が「動物取扱業」として登録されれば、第三者でも実験施設の場所や大まかな規模(飼育頭数など)の情報が得られ、また、内部告発などがあった場合、行政が飼育改善指導に入ることのできる可能性もゼロではなくなる、といった効果が期待できます。
「犬猫の殺処分ゼロ」は不妊去勢手術の徹底だけで成し遂げられるものではありません。殺処分ゼロを現実のものにするには、いわゆる蛇口を閉める必要があるのです。つまり、産み出すことを食い止めるために、それら動物を生産する業界をいかに縮小させられるかにかかっているのです。そのために動物取扱業に関するできる限り厳しい規制を盛り込むべきで、これによって行政や動物愛護団体の負担削減にもなるのです。
動物愛護法は、真に動物を守る、動物のための法律にしなければならず、動物を売買するなど商売に利用する業者保護の法律であってはなりません。
環境省や委員、そして国会議員には、改正の審議・作業において動物のことを第一に考えた改正を行っていただくために、JAVAは今後も働きかけを続けていきます。
(JAVA NEWS NO.87より)