ハムスタープレゼントにモノ申す
犬の “ゴン太”で知られているマルカン
客寄せにハムスタープレゼントを実施
2013年5月5日、6日に京セラドーム大阪で「ペットとの生活の素晴らしさや、ペットと暮らすことの効用を実感・体感していただけるペットイベント」という名目で、動物イベント「ペット王国2013」が行われました。そこで「ハムスタープレゼント」という、またしても動物を物のように扱った企画が行われたのです。
動物を苦しめるイベント
巨大な会場には63もの企業などが出展し、毎回、数万人の来場者があります。動物の健康相談や、動物関係の法律や災害への備えを学ぶといった、評価できるコーナーもありますが、一方では、犬や猫をはじめ小動物・爬虫類・鳥類・魚類・昆虫といった、ありとあらゆる動物を展示したり、来場者に触らせたりするコーナーもあり、この「ペット王国2013」は、動物に多大なストレスを与えるイベントなのです。
そして今回、出展企業の一つである株式会社マルカンが、またしても「ハムスターのペア100組をプレゼント」という許しがたい企画を実施したのです。
集客目的に利用されたハムスター
「11時より配布開始(先着100ペア・無くなり次第終了)」と宣伝し、雄雌ペアのジャンガリアンハムスターを来場者たちに手渡しました。マルカンは、プレゼントに抗議した市民や愛護団体に「十分に検討した来場者に、十分な事前説明をしたうえで手渡した」と主張しましたが、先着の企画では、来場者は焦り、「プレゼントなら欲しい」「タダならもらわなきゃ損」との心理が働き、十分な検討をしないでもらってしまうことになってしまいます。そして短時間のうちに、100ペアのハムスターの希望者、つまり100人もの人たちに事前説明が十分に行えるはずはありません。現にインターネット上には、説明会がたったの5分程度と短く、説明をきちんと聞いていない来場者にも配布するなど雑であったとの報告も見受けられました。
動物プレゼント企画の問題点
【問題点1】 安易な飼育は安易な放棄につながる
動物を家族として迎え入れ、共に生活をしていくということは簡単なことではなく、事前に準備や家族の合意が必要なのはもちろんのこと、将来にわたっての経済的な負担も覚悟しなければならないのは、皆さんもご存知のとおりです。
具体的なハムスターの飼育においては、次のような準備や心づもりが必要です。
- 寒い地域原産の動物であるため、暑さに弱い。寒さについても気温が低すぎると冬眠のような状態になり、健康を害するので、厳重な温度管理が必要(適温は20~25度)。クーラーによる室温の下がりすぎも危険。
- 採光、通気、換気のよい、十分な広さのケージで飼育する。
- 穴を掘って巣穴生活をする動物なので、巣箱が必要。
- 運動や砂遊びをするため、はしご、車輪などのいろいろな運動具や砂が必要。
- そのほか、食器、水入れ、床材、トイレ、ヒーター、かじり木なども必要。
- 1日1回はトイレの全部取り換え、週1回は床材の全部取り換えが必要。
- 6週齢から妊娠可能で、約20日という短い妊娠期間で、一度に約5匹出産することから、繁殖制限は重要。
- 単独生活を好むため、また喧嘩や過剰繁殖を防ぐため、1ケージに1匹の飼育をする(マルカンのホームページにも「1つのケージに1匹での飼育が基本です。」と掲載されています)。
今回の企画のように、「タダでもらえるから」などと安易にハムスターをもらった場合、飼い主に、こういった準備や心づもりができている可能性は少なく、終生愛情飼育ができる保証は極めて低いと言わざるを得ないのです。
【問題点2】 市民が動物飼育を安易に考え、モラルの低下を招く
捨て犬猫を保護し、里親探しをするボランティアの方たちは、譲渡した動物が不適切な飼育や放棄をされたり、虐待目的で欲しがる異常者などにだまし取られることのないよう、譲渡希望者に対しては身分証明書の確認をはじめ、「家族全員が賛成しているか」「飼育不可の住宅ではないか」「家族に動物アレルギーの人がいないか」「きちんと健康管理をできるか」「写真をつけて定期報告をできるか」などを約束させています。そして、最終的には里親の自宅を訪れて自分の目で確認してやっと、譲渡するにふさわしい家庭として、審査に合格させるのです。
自治体の譲渡システムでも、事前に里親の審査を行い、講習会の受講を義務付けるなどしているところが多くあり、これは「安易に動物を飼う人が、安易に動物を捨てる」という事態を防ぐためであることは言うまでもありません。
これらのことは犬猫だけでなく、ハムスターの飼育においても当てはまることであり、飼い主になる者の責任の重さはどの動物に対しても同じであると言えます。
さらに、ハムスターを客寄せの景品としていると思われても致し方ない宣伝文句で広告を出している以上、その広告を見た多くの人が、「動物を景品にしても構わない」「ペット関連の企業が景品にするくらいなのだから、ハムスターなど簡単に飼えるもの」と思うのは当然であり、このような広告や企画が社会的モラルの低下を招くことは否定できません。
【問題点3】 ペアでの譲渡は過剰繁殖に繋がる
ジャンガリアンハムスターが約20日という短い妊娠期間で、一度に約5匹出産するという、犬猫とは比べ物にならない高い繁殖力を持っていることを考えても、また、ハムスターは1ケージ1匹で飼育すべきであることを考えても、マルカンがペアでプレゼントしたことは、非常に無責任な行為です。【問題点1】で指摘したとおり、ハムスター飼育のために必要な用品をきちんと準備してからハムスターをもらった家庭があるとは思えず、ましてや2匹を別々に飼うために、2セット用意しているとは考えられず、ハムスターをもらった家庭では適切に繁殖制限を行えずに、過剰繁殖状態に陥ってしまう可能性は大いにあるのです。実際、前年、マルカンの「ハムスタープレゼント」でもらい、その1か月半後には6匹も産ませてしまったとブログで報告している人もいます。
【問題点4】 イベント会場では、動物は大きな負担を受ける
イベント会場で生体を扱うと、動物たちは遠距離を移動させられたり、大勢の人たちが集まり騒がしい中に長時間置かれ、十分な給餌給水を受けることも、休むこともできず、心身共に計り知れない程のストレスを受けます。プレゼントであれ、販売であれ、展示であれ、そもそもイベント会場において動物を扱うこと自体に多大な問題があるのです。
忘れられた生き物目線
株式会社マルカンは、生体販売を始め、ペットフードや飼育グッズなど、幅広く展開している企業です。ペットフードのキャラクター、犬の「ゴン太」と言えば、テレビコマーシャルを思い出される方もおられるでしょう。マルカンは、動物の生態や飼育に関する豊富な知識を有しており、消費者に対して適正飼育についての情報を提供したり、アドバイスする立場なのです。同社のホームページには、動物の生態について説明するページもあります。動物を熟知し、動物と人との良い関わりを考えるのなら、生きものの目線に立つことを優先するのが当然であり、単に集客目的のために、命ある動物を「景品=物」として扱う企画を実施したことは、あまりにも軽率としか言いようがありません。
JAVA、マルカンに再発防止を要請
JAVAはこれらの問題点をマルカンに対して指摘したうえで、動物プレゼントを二度と行わないこと、ハムスターを渡した人たちに、今後も飼育上の適切な指導を続け、責任を持って終生愛情飼育をさせることを強く要請しました。また、「ペット王国2013」の主催者であるエコートレーディング株式会社、後援をしていた大阪府に対しても同様の問題指摘を行いました。
エコートレーディングからは、「企画に関して問題点が多いとのご意見をいただいておりますこともあり、今後の実施に関しては検討して参る所存であります。」との回答が、大阪府からは、「株式会社マルカンに対しては平成25年5月10日に、主催者に対しては平成25年5月22日に改善を図られるよう求めました。」との回答がありました。
肝心のマルカンは再三の督促にもかかわらず、現時点(2014年3月17日)では回答をしてきていません。ほとぼりが冷めるまで、言明を逃れようとしているとしか考えられません。
マルカンが問題をきちんと認識しなければ同じことを繰り返していく恐れがあります。動物を取り扱うマルカンに対しては動物プレゼントのような、命を軽んじることは二度と行わないよう、強く求めていく必要があります。
■株式会社マルカン■
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