化粧品業界の約半数「動物実験代替法の利用は考えていない」

2014年11月21日

2014年7月4日、「代替法ガイダンスに関するアンケート」の結果が、JaCVAM(日本動物実験代替法評価センター)のウェブサイト上で公開され、対象企業の4割強が「代替法の利用は考えていない」、8割が「代替法で申請したことがない」と答えていることが明らかになりました。


動物実験に対する批判が高まって開発が進められてきた代替法。まだすべての試験項目について確立されてはいないものの、いくつかの試験はOECD(経済開発協力機構)など公的機関に認められ、日本でもJaCVAMの主導で、それらの試験法の国内への導入や、国際機関への日本で開発された試験法の提案などが積極的に進められています。一方、公的に認められた試験法については、企業向けに、「ガイダンス」という、いわゆる“代替法のマニュアル”が厚生労働省から出されてきました。
そのガイダンスが有効に機能しているのかどうかを知る目的で実施されたこのアンケートは、昨年(2013年)12月、日本化粧品工業連合会(粧工連)の技術委員会に参加している44社の化粧品メーカーに送付され、そのうち回答があったのは36社でした(回答率約82%)。 

動物実験が必要とされる薬事申請(医薬部外品の製造販売承認申請および化粧品基準改正要請)に関して、これまでに発出された代替法を巡る通知とガイダンス

代替法があっても動物実験を選ぶのか

「ガイダンスまで出されているなら、動物実験は減って、代替法による申請が増えているはず」と考えるのが当然です。ところが、アンケート結果をみるとなんと42%(15社)が「代替法の利用は考えていない」と回答。
その内訳をみると「新規の申請は検討していない」という物理的な理由もあるものの、「技術習得が困難」「申請に通常より期間がかかりそう」「費用が高い」などという怠慢な理由がならんでいます。さらに「他の試験も含め、動物を使用するので完全に代替できないため」という理由もありました。真意のほどはわかりませんが、「他の試験で動物を使っているのだから一部だけ代替法を使っても意味がない」という「100かゼロか」、つまり、動物を使うか全く使わないか、という思考で代替法を考えているのだとしたら、代替法が求められている社会的背景をまったく理解できていません。

出典: JaCVAM

そして、薬事申請に代替法を利用したことがあるかどうかについて「ある」と答えたのはたったの19%(7社)。81%(29社)は代替法を無視してきている、つまり、目の前に、使える代替法があるのに、それを使わないで、動物実験をしているということです。

出典: JaCVAM

動物実験を続けるメーカーは、私たち消費者に対して、表では「代替法が存在しない試験などやむを得ない場合に限り」「動物実験は最小限にとどめている」などともっともらしく説明します。しかし裏では、それらのメーカーの半数は、代替法が存在しているにもかかわらず「あえて」動物実験を選んで行っているということが今回判明しました。そしてその理由は「難しい」「時間がかかりそう」「高い」…どれも到底、動物実験依存を正当化できるものではありません。

業界団体の意識改革を

「日本化粧品工業連合会では、1991年に『動物実験代替専門委員会』を技術委員会内に設置し、動物実験代替法の開発と評価に向けて具体的な取組みをはじめました。近年では、動物実験代替法の普及活動にも力を注ぎ、活動範囲も化粧品業界内のみではなく行政及び学会等と連携しながら進めています」――粧工連のウェブサイトにはこのように書かれています(下線筆者)。
このアンケートは、代替法の専門委員会が設置されているという「技術委員会」に参加している会員企業に送られたものですが、無回答が8社もあったことに加え、「普及活動にも力を注ぎ」とあるにもかかわらず、技術委員会内ですら普及できていないという体たらくです。
各企業にしても、業界団体にしても、表では聞こえのいいことを言いながら、裏ではすぐにでもなくせるはずの無用な動物実験を平然と行い、それを放置している。化粧品の動物実験の廃止が騒がれて久しいのに、この怠慢は看過できるものではありません。

ガイダンスだけでは動物実験は減らない

このアンケート結果からわかることは、いくら政府が、開発された代替法を評価し、公的に認め、そのマニュアルを作って、「代替法を使うように」と企業に促しても、動物実験の削減や廃止にはつながっていない、という事実です。
企業に「動物の犠牲を減らそう」という自発的な「倫理」が働かないのであれば、国として動物実験をやるなと規制していくべきです。
JAVAは以前から、

「動物実験代替法が確立するまでの間、医薬部外品(薬用化粧品)の承認申請および化粧品基準の改正要請の受理に際して、動物実験による試験結果を受け入れないこと」

を厚生労働省に対して訴えてきました。
多くの時間と労力を要する立法や法改正という方法に訴える前に、動物実験の結果を受け入れないことで、事実上の禁止状態を作ることは可能なはずです。
少なくとも、代替法が確立し、ガイダンスが出されたものについては動物実験を受け付けないという対応はすぐにでもできるはずです。

ぜひ、あなたも声を届けてください。

厚生労働省 国民の声

日本化粧品工業連合会(粧工連)
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