翅(はね)に熱した接着剤 テントウムシを虐待
<教育プロジェクト>
翅(はね)に熱した接着剤
成田西陵高校、テントウムシへの虐待を続ける
千葉県立成田西陵高等学校の部活動で、「テントウムシの翅を接着剤で固定して飛べないようにさせる」という行為を行っていることが発覚。JAVAや多くの市民の意見を受け入れず、学校はこの残酷行為を続けるとしています。
テレビの報道で発覚
2015年2月25日放送のTBSテレビのニュース番組「Nスタ」と、4月19日放送の同局情報番組「サンデーモーニング」で、この「アブラムシ退治をより効果的にするため、テントウムシの翅を接着剤で固定して飛べないようにさせる」という、千葉県立成田西陵高等学校(以下、成田西陵高校)の地域生物研究部の活動が紹介されました。
テレビ報道を見た方々から寄せられた情報によると、報道内容は以下のとおりです。
- 農作物につくアブラムシ退治のためテントウムシを利用しているが、テントウムシは飛んで行ってしまうので今ひとつ効果が足りなかった。テントウムシが飛んで行かずにその場にずっといればアブラムシ退治に効果的なので、テントウムシが飛んで行けないようにした。
- 方法は、テントウムシを網皿に入れ、下から掃除機で吸って飛び立てないようにした状態で、背中にグルーガンで樹脂製接着剤をつけて翅を開けないようにする。
- 「サンデーモーニング」では、出演者から「かわいそうに」といった声も漏れた。
同校には農業や園芸を学べる学科があり、生徒たちは農家の方の苦労を見て、「手助けをしてあげたい」という気持ちで取り組んだのだと考えられます。また、虫を利用した農業は、農薬使用を回避できるなど自然環境や人体への利点もあるでしょう。しかし、だからといって、命あるものを苦しめて良いという理由にはなりません。
テントウムシにとってあまりに残酷な行為
そもそも、接着剤は生き物につけるために使う物ではありません。グル―ガンも手芸や工作に用いられ、溶けた100~200度という高温の樹脂が固まることによって材料が固定される仕組みです。その高温の樹脂を生きたテントウムシにつけ、翅を開けないようにするとは、あまりに酷い行為です。
テントウムシにとって、移動に欠かせない翅を接着剤で固定されるというのは、私たちが足を拘束されるも同然の苦痛であると容易に想像できます。成田西陵高校は「2か月たったら、接着剤は自然にはがれる」と主張していますが、自分が足を拘束されたなら、2か月も耐えられるでしょうか。しかも、テントウムシの寿命は人間よりはるかに短いのです。
イオンは、エコ活動の賞を与えていた
この「飛べなくさせたテントウムシを農業に利用する」行為が、イオングループ各社でつくられた公益財団法人イオンワンパーセントクラブ主催の「AEON eco-1(エコワン)グランプリ」の第3回で、審査員特別賞を受賞したこともわかりました(受賞タイトルは「テントウムシによる環境に優しい農業の実現を目指して」)。このグランプリは高校生のエコ活動を発表・審査するものです。
JAVAは、イオンワンパーセントクラブに対して、「成田西陵高校に対する賞を取り消すこと」と「今後のeco-1グランプリでは、生死にかかわらず、動物を用いた活動は賞の対象から除外すること」を求めました。それに対して、同財団からの回答は、今後は動物の自由を過度かつ不当に制約している場合は賞の対象から除外する、ということに留まり、JAVAの要望を全面的に受け入れるものではありませんでした。
生徒に倫理観を教えなかった学校の責任は重大
高校生のような若者が何事にも好奇心を持ち、挑戦することは重要です。しかし、それはあくまで生き物を粗末に扱わない、命を大切にすることが大前提でしょう。そして、「相手の立場を考えて行動する」「自分にされて嫌なことは他者にもしない」というのは他者と共存して生きていく上での大原則ではないでしょうか。
高校生は、善悪の判断や分別において、大人の指導が必要な場面は多々あると思います。今回のテントウムシへの行為も生徒たちは悪気をもって行ったとは思いませんが、彼らがこのアイデアを出したときに、「命の尊重」「他者の身になって考える」といった点を教師らが教え、事前に止めてあげるべきでした。「どんなに好奇心や興味があっても、便利であってもやってならないことがある」という分別をつけさせることが、教育者の役割であり、責務でもあるのです。
学校はやめる気なし 引き続き反対の声を!
JAVAでは、成田西陵高校、千葉県教育委員会に対して、この行為の問題点を指摘して即時やめるよう働きかけました。しかし、教育委員会は「一時的に飛べない状態にするが、生物農薬のように殺処分することもなく、再び自然に戻すことができる研究と聞いている。地域の農業の活性化を図るため、高校生たちが部活動の一環として一生懸命取り組んでいる、その熱意と努力については、御理解いただきたい」とし、まったく問題をわかっていません。一生懸命やろうが、やってはいけないことは、学校がきちんと教えて正すべきなのです。
成田西陵高校にいたっては、昆虫に詳しい博士などの見解などを集めた資料を送ってきて、テントウムシの体の仕組みから、グル―ガンの使用はテントウムシの体を損傷しないし、痛みも感じないから問題ないと主張し、依然としてやめる気がありません。これは、翅を拘束されて不自由を強いられるテントウムシの苦しみはまったく考えていません。農薬等で殺すことももちろん残酷ですが、「それよりはいい」とテントウムシに苦しみを与えることを正当化するのは人間の身勝手です。抵抗もできない小さな生き物に不自由な思いをさせることを良しとすることは、いじめも正当化するに等しい考え方です。テントウムシだけでなく、いじめ行為を「良い行為」として教えられる生徒たちもまた被害者です。
成田西陵高校に対して、この残酷行為をやめるよう皆さんからも声を届けてください。
校長:久門宏
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