「エシカル消費」に「動物への配慮」を!消費者庁に要望
「エシカル消費」に「動物への配慮」を!消費者庁に要望
2015年12月2日、JAVA、NPO法人アニマルライツセンター、PEACE ~命の搾取ではなく尊厳を~の3団体が連名で、「エシカル消費の普及に向けて動物保護からの提言書」を消費者庁に提出し、2015年5月以来協議されている「倫理的消費調査研究会」というテーマのなかに、動物の権利・動物福祉の考え方に基づいた「動物への配慮」を含めることを要望しました。
※「エシカル消費」とは、消費行動を通じて持続可能な社会を導こうという動き・取り組みを指します。「エコ」という取り組みが主に環境問題に対する動きだったのに対し、「エシカル」は、環境問題だけでなく幅広い社会問題を倫理的に解決していこうというものですが、明確な定義はまだありません。詳しくは本文をご覧ください。なお、文中、「倫理的消費」と「エシカル消費」は同義として扱っています。
「倫理的消費」という概念のなかに、動物の権利(Animal Rights)や動物福祉(Animal Welfare)の理念に基づいた「動物への配慮」を含めてください。
「動物への配慮」はどこへ
2012年に「消費者教育の推進に関する法律」ができて以来、消費者庁は消費者教育・啓発を進めています。その一環として2015年5月に「『倫理的消費』調査研究会」(以下、「研究会」といいます)が消費者庁内に設置され、2か月に一度のペースで会合が開かれ、「倫理的消費」の必要性・範囲・基準、さらにはその広げ方などについて約30名の委員によって話し合われています。
欧米では「倫理的消費」を考えるとき、「動物への配慮」は必ず重要な課題として扱われていますが、日本では、この研究会設置から5か月経過した段階でも、フェアトレードやオーガニックなどすでにこの界隈ではなじみのあるテーマがベースとなり、「動物への配慮」というテーマが取り上げられることはありませんでした。
3団体合同で提言書を作成
そこで、この「倫理的消費」という概念のなかに「動物への配慮」を含めてほしいとして、3団体で提言書を作成し、研究会の委員に対して提出するとともに、2015年12月2日、国会議員を通して消費者庁の担当者に対し同研究会でテーマとして取り上げるよう要望しました。
提言書では、「化粧品の動物実験」「工場畜産」「衣料品に使われる動物」の3つのテーマを取り上げ、それぞれに企業や市民団体から賛同をいただきました。「化粧品の動物実験」では、資生堂に始まる企業の自主的な動物実験廃止決定を紹介、EUで法的に禁止となった化粧品の動物実験問題は「倫理的消費」には不可欠だと訴えました。「工場畜産」とは、大量生産の原理に基づいた畜産システムのことで、牛、豚、鶏などの動物たちは狭小なスペースに詰め込まれ、結果的に彼らの健康と福祉は顧みられることがありません。欧米では畜産動物の福祉に配慮された食品の需要が増加していることを紹介しました。「衣料品に使われる動物」は、JAVAでも取り組んでいる毛皮の問題についてはもちろん、生きた動物から毛や羽をむしり取るアンゴラウールやダウンの残酷な生産方法について言及しました。
もう動物問題を置き去りにしないで
エシカルコンシューマー(倫理的消費者)運動に先がけた消費者運動に、1980年代後半英国発祥のグリーンコンシューマー運動があります。グリーンコンシューマー(自然環境に配慮する消費者)が避けるべき製品として、環境への深刻な影響を与える製品、過剰な電力を消費する製品、過剰包装の製品、第三世界の国々に悪影響を与える製品などという項目に並んで、「仮に毒性試験などの目的があったとしても、動物を不必要に使用していたり、残酷に扱ったりしてつくられている製品」という項目があったのですが、当時この運動が日本に導入された段階で、なぜかこの動物に関する項目が落とされてしまったのです。
今年2月29日に開催された研究会では、これまでの議論の中間とりまとめが行われましたが、「倫理的消費」の定義について、「障がい者支援」「フェアトレード」「環境」「地産地消」などの言葉が並びましたが、「動物」という言葉は、残念ながら、またしても聞かれませんでした。
エシカル消費運動が市民権を得て日本に広がるにあたって、今度こそ「動物への配慮」が置き去りにされることのないよう、引き続きしっかりと粘り強く訴えていきたいと思います。