毒物劇物の分野での代替法利用についての講演会参加報告

8月2日(木)に東京大学本郷キャンパスで開催された、技術講演会「毒物劇物の判定にどう代替法を用いるか」(主催:日本動物実験代替法学会)に参加しました。

開催挨拶
酒井 康行 (日本動物実験代替法学会会長、東京大学大学院工学系研究科)

毒物劇物の判定基準
古田 光子 (厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 化学物質安全対策室)

OECDのTGとJaCVAM提案書の現状
小島 肇 (国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)

代替法利用における留意点
高橋 祐次 (国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)

代替法利用に関する留意点
稲若 邦文 (日本化学工業協会 化学品管理部)

個別研究例 STE法(TG491)の利用
安保 孝幸 (花王株式会社 安全性科学研究所)

個別研究例 毒劇物の眼刺激性評価におけるウシ角膜を用いる混濁度および透過性試験法(BCOP試験)の有用性について
河村 公太郎 (株式会社化合物安全性研究所 安全性研究部)

総合討論(パネルディスカッション)

毒物及び劇物取締法において、化学物質が毒物・劇物の指定対象となるかどうかの判定にも、多くの動物実験が実施されています。
昨年6月に厚労省から出された「毒物劇物の判定基準の改定について(通知)」(薬生薬審発0613第1号 平成29年6月13日)では、近年の動物愛護の観点からの動物実験の廃止などの動向をうけて、毒物劇物の判定に使える具体的な代替法の例示がされました。

通知は国立医薬品食品衛生研究所のウェブサイトでご覧いただけます。

例示された代替法は、皮膚腐食性についての2つの代替法(経皮電気抵抗試験とヒト3次元培養表皮モデル)、眼腐食性と強度刺激性についての4つの代替法(ウシ摘出角膜を用いる混濁度および透過性試験(BCOP)、ニワトリ摘出眼球を用いる試験(ICE)、 フルオレセイン漏出試験法(FL)、in vitro 短時間曝露法(STE))です。また、皮膚刺激性についての代替法も条件つきで考慮可とされました。
ただし、急性経口毒性、急性経皮毒性、急性吸入毒性は、有効の代替法はないとして、動物実験での判断が継続されます。また、毒物劇物に指定された製剤の適用除外申請にも代替法は活用可能とされましたが、具体的な例示はされていません。このような現状や課題について6名の専門家の講演があり、最後にパネルディスカッションが行われました。

講演では、毒性の専門家から「多くの化学物質が対象となる毒物・劇物の分類における代替法の利用は、評価の高速化と効率化にも寄与する」、産業界からは「代替法の利用促進をはかりたい」といった発言がありました。
そして、パネルディスカッションでは、「動物実験ありきで、代替法は動物実験との比較のためだけのツールという印象を受けた。何十年も同じ状態。代替法でやっていこうと考えを変えてもらわないと」と、私たちが「そのとおり!」と思わず叫びたくなるような意見を言ってくれた参加者がいました。JAVAも「一つでも動物実験が減るよう代替法採用にさらに尽力してもらいたい」とパネラーたちに要望しました。

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