オーストラリアのカンガルーの虐殺 ミズノとアシックスに「カンガルー革の使用をやめて」の声を!
JAVAと協力関係にあるイタリアの動物保護団体LAVから、2019年夏、オーストラリア(以下、豪州)で行われている「Harvest(収穫)」と呼ばれるカンガルー狩りが大規模かつ非常に残酷であるとして、このHarvestをやめさせるためのキャンペーンへの協力を求められました。
カンガルー狩り「Harvest(収穫)」の残酷な実態
LAVによると、「Harvest」の表向きの目的は増えすぎたカンガルーの持続可能な頭数調整ですが、その実態は虐殺です。「Harvest」はカンガルーが夜行性であることから夜に行われ、トラックに取り付けた強力なライトでカンガルーに狙いをつけ、通常は許可証を持つハンターがトラックから撃つのです。2000年から2018年の間に、4,400万頭以上のカンガルーが殺されました(年間平均2,324,711頭)。これらのうち、成獣のカンガルーの少なくとも4.1パーセント(年間約12万頭)が、苦痛にさいなまれながらじわじわと死んでいったと推定されています。脳に銃弾が命中して即死するのではなく、負傷するためです。カンガルーはあらゆる方向にジャンプして逃げるため、複数の弾丸を受けてしまい、多くが尋常でないほどの傷を負います。顎が撃ち飛ばされる、眼球を失う、内臓が傷つく、手足を骨折する、片足を失うといった重傷を負いながらもカンガルーは必死に逃げ、生き延びようとします。
豪州政府発行の「商業目的でのカンガルーとワラビーの人道的射撃のための国家行動規範(National Code of Practice for the Humane Shooting of Kangaroos and Wallabies for Commercial Purposes)」は、商業目的で殺害する場合の「人道的」な方法を規定したものです。これには「射手は、カンガルーまたはワラビーの脳を撃つように照準を合わせなければならない」とありますが、夜間に最長で200メートルの距離から銃を発射するので、一撃で脳に命中させることは不可能です。さらに同規範では「袋に子どもがいる、あるいは母親に依存している子どもがいるメスのカンガルーとワラビーは、殺してはならない」とありますが、カンガルーは体長2センチほどで生まれ、袋の中で6か月間育てられ、その後18か月までに離乳する動物ですから、母親の袋に子どもがいるかどうか、特に夜間は見極めることは不可能です。現実的ではないことが規定された規範なのです。またすでに袋から出て母カンガルーと暮らしている子カンガルーは、母カンガルーが殺された場合、餓死するか他の動物に捕食されることになり、死に至るまで10日間も苦しむこともあります。
ミズノとアシックス
カンガルー革の使用をやめる気なし
LAVの国際キャンペーンでは、カンガルー革や肉を使用している企業への働きかけも行っています。ミズノとアシックスについてJAVA独自の調査をしたところ、スポーツシューズ等にカンガルー革を使用していることが判明したことから、2019年12月、JAVAはこの二社に「Harvest」の実態を伝え、以下の2点を強く要請する文書を送りました。
1.カンガルー革の使用を廃止すること。
2.合成皮革等、動物を犠牲にしない素材へ転換すること。
この要望書に対する二社からの回答が到底納得できるものではなかったことから、公開質問状を送り、疑問点を指摘しました。しかし、ミズノとアシックスの見解は次の通りで、問題意識がまったく感じられません。
ミズノからの回答
●レザーワーキンググループ(LWG)と豪州カンガルー産業協会(KIAA)に加盟している豪州の企業からカンガルー革を調達している。
●上記の調達先企業は豪州政府の定めた規範を遵守していると認識しており、その使用に問題があるとは考えていない。
●ミズノは法令を守った方法でカンガルー革を調達している。
●ミズノは「動物由来材料の調達ガイドライン」を定めていて、皮革に関する箇所は以下のとおり。カンガルー革の使用はこれに抵触しない。
・畜産副産物である原皮を使用する。(牛、豚、羊、馬、やぎ)
・駆除された害獣の原皮を使用する。(鹿、カンガルー)
・絶滅危惧種やエキゾチックレザーは使用しない。(ヘビ、ワニ、オーストリッチなど)
●ミズノが「害獣」として駆除されていると認識しているカンガルーの狩猟方法なので、残酷であるか否か、倫理的であるか否かは判断できない。
アシックスからの回答
●LWGに加盟し、認証を取得している皮革工場から、倫理的に健全であり、環境に配慮した皮革を調達することを推奨している。
●アシックスでは材料選定ガイドラインを設けている。以下はその抜粋。
・ビジネスパートナー及びその供給業者は、動物福祉を満たし、適切な畜産が確実に行われるように業界における最良の慣行を実行する。
・動物の材料を使用する場合、家畜からのみ取得する。
・野生動物から材料を取得しない。ただし、政府機関の監督の下、積極的に頭数管理されている団体から材料が供給される場合はこの限りでない。
・皮革を使用する場合、食肉産業の副産物から取得する。
●使用しているカンガルー革は、食品産業の副産物として加工されていると認識している。
●豪州政府のプログラムによって、厳密に管理された方法で取得され、JAVAが指摘するような残酷な手法で取得されたものではないと認識している。
●カンガルー革と同じ性能を持つ材料が現時点では存在しないため、使用を継続している。業界で代替品が可能になった場合は使用を検討する。
「LWGやKIAA加盟企業から調達」の言い訳は通用しない
両社は、使用するカンガルー革をLWGに加盟している企業から調達しているから問題ないとしています。しかし、LWGの認証のための監査においては、動物のと畜や輸送の方法等、動物の扱いは対象ではありません。つまりLWGの認証=残酷な手法で入手していないという根拠にはならないのです。
そして、ミズノはKIAAに加盟している企業から、カンガルー革を調達していることも言い訳にしています。しかし、このKIAAが遵守すべきとしている「人道的射撃のための国家行動規範:カンガルー・ワラビー編」には先述のとおり問題があります。違反をしても罰則もありませんので、KIAAに加盟は正当化の根拠にはなりません。
皆さんからも声を届けてください!
たしかに両社のカンガルー革の取得と使用は違法ではありません。しかし、例えば毛皮産業も違法ではありませんが、多くのアパレルブランドが倫理的理由から毛皮の使用をやめたことは皆さんもご存じのとおりです。そしてカンガルー革については2019年10月、サッカーシューズで有名なイタリアのメーカーDIADORA(ディアドラ)が、使用を2020年末にはやめることを決断しました。ですので、世界的なメーカーであるミズノとアシックスにも、合法であることを言い訳にせず、倫理面的な観点からカンガルー革の使用を廃止してもらいたいのです。
ぜひ皆さんからもミズノとアシックスに「カンガルー革の使用をやめて!」という声を届けてください。
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※アシックスは東京2020のゴールドスポンサー
The ends and means of the commercial kangaroo industry: an ecological, legal and comparative analysis. THINKK, University of Technology, Sydney. Ben-Ami, D., Boom, K., Boronyak, L., Croft, D., Ramp, D., Townend, C. (2011)