首都圏の国立大学における「動物実験に関する教育訓練」の実施状況

動物愛護法には、動物実験の「3Rの原則」(動物実験に代わる方法の利用・実験動物数の削減・実験動物の苦痛の軽減)の理念が盛り込まれています。また、文部科学省の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」には、「研究機関等の長は、動物実験実施者及び実験動物の飼養又は保管に従事する者(以下「動物実験実施者等」という。)に対し、動物実験等の実施並びに実験動物の飼養及び保管を適切に実施するために必要な基礎知識の修得を目的とした教育訓練の実施その他動物実験実施者等の資質向上を図るために必要な措置を講じること」と規定されています。

さらに、2019年6月に施行された改正動物愛護法のもとに策定されている「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」の中では、「実験動物の適正な取扱いの推進」についての今後の施策展開の方向として「国は、関係省庁、団体等と連携しながら、実験動物を取り扱う関係機関及び関係者に対し、『3Rの原則』、実験動物の飼養保管等基準の周知の推進や遵守の徹底を進めるとともに、当該基準の遵守状況について、定期的な実態把握を行い、適切な方法により公表すること」と記され、「3Rの原則」の遵守をはじめ、動物実験における倫理向上がますます問われてきていると言えます。

そのようなことから、教育訓練は、動物実験の削減や廃止に直接つながるものではありませんが、その実施の現状はどうなのだろうと考え、2021年5月、首都圏にある21の国立大学に対して、「動物実験に関する教育訓練についての公開質問状」を送付し、教育訓練の実施状況を調査しました。(各大学からの回答は下記の一覧をご覧ください)

「動物実験に関する教育訓練」とは

ここでは、動物の生体を用いた授業・実習・研究等(以下「動物実験」とします。)の実施や実験動物の取扱い関し、次のような内容を教育訓練するものと定義します。

  • 関連法令、指針など大学の定める規則・規程、実施体制等
  • 適正な動物実験の方法に関する事項
  • 適正な実験動物の飼養保管に関する事項
  • 安全確保、安全管理に関する事項
  • 動物実験実施に関する諸手続及び注意事項等
  • 動物福祉、動物実験の倫理に関する事項
  • 災害対応に関する事項
  • その他、適正な動物実験等の実施に関する事項

調査結果

動物実験を実施している大学は、動物を扱う全ての教職員及び学生を対象に実施し、受講を義務付けていることがわかりました。コロナ禍においてもオンライン形式にするなどして変わらず実施しています。そして、受講したかどうかの確認方法は、各大学工夫していることもわかります。それから、動物実験に関わる法律や動物福祉に関することは、全大学関係者で共有したほうが良いわけですが、動物を扱っていない教職員や学生も希望すれば教育訓練を受講できるようにしています。あくまで公開質問状への回答によるものですが、一定の評価はできます。
しかし、3大学(筑波技術大学、東京大学、お茶の水女子大学)は、JAVAへの回答を拒否しました。教育訓練は先に述べたように実施しなければならないものであり、またJAVAが質問をしたことは機密にすべき情報でもありません。国立大学が回答を拒否したことは言語道断であり、回答できない何かやましい実態があるのではないかと疑わざるを得ません。

首都圏の国立大学における「動物実験に関する教育訓練」の実施状況の回答一覧

※回答一覧はPDFデータからもご覧いただけます。

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