実験用ラットの「ルル」

これからご紹介する下記のエピソードは、動物実験が行われている大学の卒業生の方から届いた私記です。

わたしに命の尊さを教えてくれたのは、大学の実習で出会った、ある1匹のラットでした。

「ルル」は実験用ラットとして大学で飼育され、数週間後の解剖実習で犠牲となる命でした。
解剖実習では健康なラットに特定の成分を数週間与え続け、最終的に致死させ臓器の状態を観察するというものでした。

各班に一匹ずつラットが用意され、わたしの班に来たラットがルルでした。
狭い実験用ケージで過ごしているルルの顔つきは日が経つにつれて徐々に険しくなり、他の班のラット達に比べ、餌の摂取量も少なく、暴れて自らを傷つけてしまったのか、両耳と鼻に怪我を負っていました。
そして、いつもケージの隅で体をまるめてこちらを見つめていました。
まるで、これから自分が亡くなることがわかっているようでした。
本当に、痛くて悲しくて辛かったのだと思います。
その姿をみて、罪悪感を覚えると同時に動物実験の必要性について考えさせられました。

解剖実験の結果は分かっているのに、命の犠牲は本当に必要なのでしょうか。
大切な命を、学生も先生も“モノ”として扱っているようで、わたしには耐えられませんでした。

「ルルを助けてあげたい。今すぐにでも幸せにしてあげたい」という思いが強くなり、ルルを引き取る決意をしました。

ルルを生かしてもらえるよう1人で何度も先生のもとに行き、自分の気持ちを伝えました。そして、ルルを家族として引き取らせてもらえるようお願いしました。
すると先生方もわたしの気持ちに寄り添ってくださり、ルルの解剖は中止となったのです。
在学中はルルのお世話を全てわたしに任せてもらえることになりました。

しかし、実験に積極的な学生もいたため、他の班のラットにまで口を出す勇気がなく、その時のわたしは自分の班のルルしか救うことができませんでした。残りのラット達は、解剖実習の犠牲になりました。

ルルのお世話は学内にある飼育室で行っていました。
ラットの飼育法をネットで調べ、居心地の良いケージにルルを移しました。
ごはんにもこだわり、健康を配慮したドライフード、種実類、野菜を主に与え、おやつにバナナや苺、チーズなどをバランスよくあげました。
実験動物として飼われていたときから、新聞を破くことが好きだったので、新聞も欠かさずいれてあげました。
そして、毎回名前を呼んで 何度も優しい言葉をかけ、愛情を注ぎ続けました。

変化はすぐに表れました。
住む環境や食事が変わり、1週間が経過した頃です。ケージの隅で怯えていたルルが、ごはんを目の前で食べてくれるようになり、徐々に体重も増えていきました。
そして表情が穏やかになったのです。
さらに日を重ねるごとに、手からバナナをもらうようになったり、ルルと呼ぶとこっちを見たり、近くに来てくれるようにもなりました。ルルは特にバナナや苺に目がなく、ごはんを用意している最中も、ケージから身を乗り出して待っているほどでした。

おやつを食べているルル

その後も、ルルを学校で飼育するのではなく、家族として我が家に迎え、寿命を全うさせてあげたいとわたしは強く願っていました。ルルを引き取らせてもらえるよう何度も何度も先生にお願いへ行きました。
しかし、どれだけ懇願しても、ルルを学内から出すことは許されなかったのです。
そして、ルルは、わたしが学校を卒業すると同時に、短い生涯を終えました。

先生方がルルの解剖を中止してくださったことには、深く感謝しています。
しかし、数年経った今でも、寿命を全うできず亡くなったルルのことを思うと、悔しくて悲しくて、忘れられません。

教育機関における動物実験は、“授業のためなら仕方のないこと”と学生に思い込ませるものであり、命を慈しみ思いやる心を麻痺させることに繋がってしまうと感じます。

当たり前のことですが、実験動物として生まれてきた動物にも感情があり、その命の重さに違いはないのです。

わたしは動物実験の代替法への転換を強く望んでいます。
解剖実習で犠牲となる動物がいなくなるよう、また、つらい思いをする学生さん達がいなくなるように、ルルと一緒にこれからも実験動物の命の尊さについて広めていきたいです。

動物実験がなくなることを心から望む学生より

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