動物実験がもたらす心身の影響

これからご紹介する下記のエピソードは、歯学部卒業生の方から届いた私記です。

私は、教育機関の学生による動物実験廃止を求めています。
大学や教授に対して何も言えない弱い立場の学生が何の自覚もなく、生命への尊厳も持たずに行う実験は無駄以外の何ものでもありません。そして、何十年もその懺悔と後悔に苦しめられてしまうのです。

私は1986年に広島大学歯学部に入学しました。30年以上も経っていますし、思い出したくない記憶だったため当時のことはあまり覚えていないのですが、大学4年生か5年生の基礎教科で動物を使う実習がありました。

学生15〜20人で1匹の犬を使い、その日合計で4〜5匹の犬を使用しました。私のグループはビーグル犬でしたが、多種の犬が使われていました(当時の歯学部の屋上には犬舎があり、私は実際には見ていないのですが、汚くて臭く劣悪な環境だと聞かされていました)。
実習の目的は、呼吸管理を学ぶためだったと思いますが、曖昧な記憶しかありません。こんな学生のために犬達は犠牲になりました。

実習が終わると犬を殺処分します。
暴れていなかったのでおそらく麻酔等をされていたと思いますが、カリウムの注射を心臓部に何度も刺され、殺されました。犬は大きな袋にまるでゴミを捨てるかのように入れられて、実習は終わり。「今日の授業は終わりです」って。

学生の私達はあまりにも未熟で、異を唱えたり反対したりする人はいませんでした。泣く人もいませんでした。
私は青色のコートを羽織り、涙を堪えて教室を出たことを鮮明に覚えています。

あれから私はビーグル犬を目にすることができません。また、街中で青いコートを見かけると当時の事がフラッシュバックし、その場に立ち尽くしてしまいます。
そして、今でも毎晩ごめんなさいとあの犬に謝っています。

1992年に歯学部を卒業し、歯科医師免許取得して私は開業医になりました。しかし、当時の経験は何の役にも立っていません。
教育機関で行われる動物実験がいかに無意味であるかということに加え、その動物実験によって、何十年も罪悪感から逃れられず苦しんでいる人がいるということを、多くの方に知っていただきたいと思います。

そして一日でも早く教育機関での動物実験が廃止されることを願っています。

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