頭足類保護への白星 <米国>

PCRM〈*1〉などからの長年にわたる働きかけにより、米国国立衛生研究所(NIH)は、実験に使用されるタコ、イカなどの頭足類の保護を一歩前進させた。NIHは、頭足類の管理と使用に関するガイダンス案を発表したのだ。

このガイダンスが施行されれば、頭足類を使用する研究者らは、初めて動物福祉監視機関である動物実験委員会(IACUC〈*2〉)の承認を得ることが義務づけられる。IACUC は、動物を使用しない方法ではなく頭足類を使用することの正当性や、適切な鎮静と麻酔、実験手順が動物の健康やウェルビーイングに与える影響などを考慮する必要がある。

2020年、PCRMと団体や科学者の連合はNIHに対し、「実験動物の人道的管理と使用に関する規範」の「動物」の定義を修正し、頭足類を含めるよう要請した。頭足類やその他の無脊椎動物は「動物」の定義に含まれていないため、福祉や説明責任の対象から除外されているのだ。2022年9月、PCRMはバーチャル説明会を開催し、この重要な課題についての認識を高め、政府機関に行動を起こすよう圧力をかけることを議会に促した。その翌月には、下院議員19名が当初の要請を繰り返す内容の文書をNIHと保健福祉省に送ることを、PCRMが支援した。その後、4名の上院議員もそれに続いた。勢いは加速し、2023年9月、ついにNIHは頭足類のガイダンスを提案した。

しかし、私たちの取り組みはまだ終わらない。頭足類に対する侵襲的研究はすべて、「ヒトの健康につなげるのにより適した、ヒトに特化したアプローチ方法」あるいは、「非侵襲的で観察的な野生生物の研究」のいずれかに置き換えられるべきである。


  1. *1Physicians Committee for Responsible Medicine(責任ある医療のための医師委員会)/米国
  2. *2Institutional Animal Care and Use Committee:教育や研究に使用される動物の飼育と使用を監視し、動物実験計画の審査などを行う。米国においては、動物福祉法や保健福祉省公衆衛生局の方針(PHS方針)に基づいて設置が義務付けられている。

※2021年10月26日掲載記事「“研究室の頭足類を守る連合”に参加」の続報です。

Winning Protections for Cephalopods (PCRM)

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